リレーコラムについて

片付けられない女たちへ。

髙田美子

最近、よくTVのニュースやワイドショーでも
ゴミ屋敷だの、ゴミのなかに暮らす若い女性や主婦が
とりあげられる。これは、見ても信じられない光景だ。
散らかり放題の独身男の部屋を、訪ねてきた恋人の女性が
掃除や片づけや洗濯をテキパキとやってくれる。
そんな、一昔前の幻想はもう捨てたほうがいいかもしれない。
たいていの女は、他人の部屋までとても手が回らない。
そこまでいかなくても、東京スタイルの部屋は密かに増殖中だと
私は考える。豊かになって、モノが多すぎるから?
もちろんそれもあるだろう。しかし話はそう単純ではない。
たとえばこの1月で、買ったりもらったりして増えたモノと
使ったり捨てたりして減ったモノとを、プラスマイナスしてみる。
減ったと言い切れる人の部屋は、きっとスッキリしてるだろう。
しかし、そうでなければ確実にそれらは部屋を侵食しているはずだ。
たとえば、バッグを幾つもってますか。靴は何足?
ブーツ、サンダル、ミュール、女の靴は種類だって多いし。
本は読み終えたらどうしますか。本棚は、もう2度と読まない
本でいっぱいではないですか。これは、天に唾する私自身に向けての
問いでもあります。このまえ一念発起して、
ゴミの日ごとに不要品を捨てまくった。
これって結構体力・気力がいります。しかし、
目を瞠るとほどの成果はなかった。やらないよりマシって程度。
もっと、基準値をかえてかからないとモノは減らせない。
一方で若い女性たちが、働いて新しい服やバックやアクセサリーを
つぎつぎ手にするのは素敵なことだともおもうのだ。
しかし、口紅もマニキュアもひとりで十何本も持つとなると
洗面所だってごちゃごちゃになる。広告のしごとは
それを後押ししてることには間違いない。
先日長崎空港で、手荷物検査の列にシスターが私の前に並んでいた。
ペットボトルや金属は鍵やキーにいたるまでトレイにだすのだが、
彼女は、銀の十字架をそっと首からはずしお財布とふたつだけ
トレイに入れた。荷物は小さな旅行バッグだけ。
彼女の部屋はきっと簡素で気持ちがいい場所にちがいない。
数年前、戸建てをたたんでマンションに住み替えた妹がいった。
「捨てたモノって、思い出しもしないものよ。」
私も、このへんで棚卸ししなっくっちゃ。

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