リレーコラムについて

ココニイルコト

古泉和子

映画が「好き」です。
「好き」はふしぎと届くもので
最近、映画製作にかかわる仕事やってます。
たとえば、映画『ココニイルコト』。
劇中で使われる丸亀玩具のコピー書いたり、
(主人公がコピーライターなのです。演じたのは真中瞳)
そして宣伝コピーも書いたり。
さらに、この映画についてインタビューされたりもしました。
そのときの内容をのっけよう・・・

      ▼
この映画は、ひとことでいうと、

「幸せって、こういうことなんだなあ。

すごく、カンタンなことだったんだなあ」と気づかせて

くれる作品だと思うんです。

小谷野敦さんのエッセイ『軟弱者の言い分』

に書いてあったのですが、

「幸せ」って、明治ころまでは

「仕合せ」というふうに書かれるのが一般的だったそうです。

それは、「幸福」という意味ではなく、

「巡り合わせ」とか「運命」とか、

結局こうなってしまいました、とかいう意味。

「ハピネス」の語源はハプニングだ、とも。

つまりは、

幸せっていうのは、本来、継続した状態ではなく、

出来事なのだといったことが書いてあって

うんうんとうなずいてしまいました。

結婚したら幸せ、家を持てたら幸せ、

といった“形態”じゃなくって、

仲良しだから幸せ、気持ちいいから幸せ、

といった“状態”なんだな。

それが、幸せと気づいたら、

ひとはたちまち幸せになれるんだな。

頬にふれる風が気持ちいい、

お腹がすいてごはんがおいしくてうれしい、

好きな人がいてありがたい。

気持ちはつねに変化するもの。

自分の気持ちも変化するし、相手も変化する。

だから、変化することをおそれないこと。

変化すれば、今あるものを失うなんて思わないこと。

手放すとラクになれるよ。

執着しないとまた次の楽しいことがめぐってくるよ。

変わり続けるひとつひとつの出来事、

変わり続ける一瞬一瞬を楽しむことが、幸せなんだよ。

“生きること”と“死ぬこと”は同じこと。

だから、死を感じながら生きてた悦朗は、

ちょっとはやく生きる幸せっていうことに

気づいていたんですね。

この映画の仕事に声をかけてくださった

プロデューサーの小滝さんには、

4、5年ほどまえ、ある日本映画専門チャンネルづくり

のときにも誘っていただきました。

その打ち合わせのとき、

みんなに聴かせてくれた曲がSMAP版の「ココニイルコト」。

“いい曲だろっ”て。

しばらくぶりに小滝さんから電話をいただいて、

私はこの映画の脚本を読んで、

コピーを書くことになりました。

提出した数日後の深夜、突然に電話をいただきました。

「ちょっと待って、代わるから・・・・・」

電話口に出られて、「ありがとう。良かったです」

と叫んでいたのは長澤監督でした。

お二人とも、相当に酔っ払っていて。

実は私もかなり酔っ払っていたのですが。

これが、私と長澤監督との出会いなんです。たとえ電話でも、

それは私にとって“鍵穴が開く”一瞬でした。

「あ、幸せだな」心から、ほんとうに、そう思いました。(談)

(映画『ココニイルコト』 パンフレットより)

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読んでくださった方に感謝です。
ありがとうございました。
来週は、一緒に酒をのんでも、旅をしても、仕事しても、
さっぱりとして気持ちのよい田中麻子さんです。

古泉和子の過去のコラム一覧

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