リレーコラムについて

あるコピーライターの話:1

後藤国弘

 先週の梅田さんから引き継ぎました、後藤です。フリーのコピーライターとして仕事をしている僕の周辺には面白い人たちが大勢いて、毎日いろいろ楽しませてもらってます。今週は、そんな僕の友人たちから聞いた話でもしようかなあ、と思います。たぶん、全然、役に立たない話ばかりですが、許してね。

 それは僕の友人の、あるコピーライターの話です。彼が何年か前に建設会社の広告の仕事をした時のこと。ちょっと長めのボディコピーを気合いを入れて書いたらしいんですが、その中に「会いたくて、会いたくて、会いたくて。」という三回繰り返しのフレーズを使ったんだそうです。何でも、橋を作るのが主な仕事の建設会社だったらしく、人が初めて橋を作った時には、きっと川の向こう側に大好きな人がいて、その人に会いたくて、会いたくて、会いたくて、橋を作ったんだと思う・・・みたいな内容だったそうです。その中で「会いたくて」の数を二回でも四回でもなく、三回にする所がコピーライターの仕事なんだと彼が得意気に語ってくれたのを覚えています。

 その後、彼の実家が家を建て直すことになり、弟夫婦が彼の荷物を整理していた時のこと。二十年近く前の古い文集が出てきて、その中には彼が小学校五年生の時に、市が敬老の日に主宰する「お年寄りに贈る作文大会」で一等賞をもらった作文が載っていたそうです。鍵っ子だった彼は、おじいちゃんが作ってくれる味噌を付けて焼いたおにぎりが大好きで、学校から帰って来て、その焼きおにぎりを食べるのが本当に楽しみだったとのこと。で、その作文には「おじいちゃんの焼きおにぎりは本当に、おいしくて、おいしくて、おいしくて。」と二回でも四回でもなく、三回「おいしくて」が繰り返されていたそうです。

 練習するだけでコピーが上手くなれば、ラクですよね。でも、それじゃあ、つまらないですよね。彼の話を聞きながら、そんなことを思いました。では、また明日。 
 

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