リレーコラムについて

合コン王と牛丼と僕。

芳谷兼昌

アッハ〜ン、ウッフ〜ン。
声の女性はテレビの中にいる。

僕はA男の家にいた。
A男とは、そう、百戦錬磨の合コン王である。

男ふたり、彼の武勇伝を肴にグラスを傾けていた。
A男は氷を取りに台所へ行った。
ゴロンと横になった僕の眼に飛び込んできたのは、
おんなの人の長い髪、1本。
親指と人差し指でそっと摘み上げた。
吉野家さんのだったりして・・・・・。
何考えてんだよ、俺は。酔いが回ってきてるな。

ピ〜ンポ〜ン。
クイズに正解したわけじゃない。
誰かが訪ねてきたのだ。
「なんだよ、オマエ!」
A男が冷たい口調でもてなした。
僕はおどろいた。
吉野家さんが立っている。
「え!出前もしてくれんの?」
牛丼、基、吉野屋さんが顔を赤らめた。
アッハ〜ン、ウッフ〜ン。
やばい!テレビ!テレビ!

「俺、帰るよ!」
「頼む、いてくれ!二人っきりにしないでくれ!」
僕とA男のやりとりである。
なにが二人っきりにしないでくれだ、
二人っきりになりたいがために、
あの夜、テイクアウトしたくせに。

吉野家さんが黙ったまま下を向いている。
なんで僕がここにいるの?
A男も黙ったままテレビを観ている。
さっきより飲むピッチが早くなってるのがわかる。
彼女が口を開いた。
「あそび?だった?だよね?」
A男は空になったグラスに再び酒を満たしている。
「俺、やっぱり帰る」

「あの合コン、行かなきゃよかった」と彼女はつぶやいた。
駅へと向かう道である。
なんで僕が送ってるの?
彼女は泣いている。
すれ違う人がチラッと彼女を見、その後必ず僕を見る。
僕が泣かしたんとちゃいます光線を必死に送るが、
男らしくないぞビームを返されるだけだった。

「そこらへんで一杯だけ飲んでいく?」
「ありがと、でも帰る」
そう言って彼女は終電に急ぐ人の波にとけ見えなくなった。

あわよくば、ムフフ・・・なコトを考えていた自分を反省した。

ありがとうございました。
次の走者は、「E」の、東 秀紀さんです。
快くバトンを受け継いでくれました。
東さん、よろしくお願いします。

      仲畑広告制作所      芳 谷 兼 昌

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