リレーコラムについて

安い、早い、うまい。

芳谷兼昌

独身女性を好物とする野獣がいる。
合コン百戦錬磨の男、A男。
見た目は冴えない野郎だが、
狙った獲物はけっして逃さない。
女性が牛丼に見えてしまうほど、
いつも手軽に持ち帰ってしまうのだ。

先日、A男と僕は合コンに誘われた。
相手はフライトアテンダント。
ス、スッチーである。

待ち合わせ場所、もうA男は来ていた。
ふだん見せないスーツ姿。荒い鼻息。
今夜はいつも以上にヤル気マンマンだ。
お店へと向かう道、
スッチーたちは僕たちの前を歩いた。
♪ど〜れ〜に〜し〜よ〜お〜か〜な・・・・♪
A男はひとりひとりを指差しながら品定めしている。
「ニコッ」
どうやら今晩の牛丼が決まったようだ。
どうか僕の気に入ったコじゃありませんように。

いつもより早いピッチで酒を流し込んだ。
僕のお気に入り、
吉野屋さんがA男の隣で楽しそうにいる。
もうつまらない。早く帰りたい。

なんでココにいるんだろ。
僕は二次会のカラオケボックスにいた。
吉野屋さんは、またもやA男の横にいる。
「ふらけんな!ビャーロー」
イカン、ロレツが回らない。ちと飲みすぎたみたい。

A男はいつもの河村隆一を歌った。
唇をナメながらカラダをクネクネさせ、
上目遣いで吉野家さんを見つめている。
「や〜だぁ、キモチ悪い〜」
そんな彼女の言葉は、彼の中では計算通り。
次の曲へのデモンストレーションにしか過ぎない。
連チャンで入れられていた曲は、「いとしのエリー」。
A男の桑田佳祐のモノマネは絶品で、
はじめて聴く人をうっとりさせてしまう。
あ〜、もう見ちゃいられない。
吉野屋さんの肩に、アイツの手がかかった。

A男はタクシーを停めた。
いつのまにか吉野屋さんと帰る方向が一緒になっている。
後部座席から手を振るふたり。
今宵も牛丼はテイクアウトされた。
「お早めにお召し上がりください」とばかりに。

                
                芳 谷 兼 昌

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