リレーコラムについて

未 YEAR OF THE SHEEP

川見航太

もう3月ですね。
前回のつづきで2014年の話。
あったかくなったので(?)、丁寧語をやめてみます。

東日本大震災からの復興をきっかけに
2年半続いたシリーズ広告も一段落し、僕はヒマになった。
依然としてTCC新人賞は遠く、一年間やっとのことで集めた広告が
ノミネートにも引っかからない、という状況が続いていた。

新人賞に落ちた経験のある人間は
「自分には才能がない」とか、「この仕事は向いてない」といった
自分への呪詛のような言葉が脳内をローリンローリンすることがある。
そういうとき、大切なのは直接の問題ばかりに囚われないことだ。
僕の場合、「コピーを上手に書く」ということをいくら念じても
成果が出ないということを、このあたりで確信していた。
人はそれを「逃げ」と言う。だが、それが何だ?

限界を乗り越えるためには、
自分がこれまでに学んできたことをすべて使う必要がある。
CMもグラフィックもブランディングもSPもCIもVIも
事業開発もメディア開発も番組制作もプロダクト開発も。
バラバラに使うのではなく、考えを統合するためにどうするか。
そのためのキーワードが「編集」。
2006年にコピーライター/CMプランナーの名刺を手にしてから、
8年の月日が過ぎようとしていた。

もはや当たり前と思う人も多いかもしれないが、
編集は、職業的な編集者だけのものではない。
そして編集というコンセプトは、広告のフィールドを拡張する。
そこに、僕は面白さを感じる。

読み物はもちろん、広告も、写真も、音楽も、
アートも、イベントも、アプリも、ものづくりも、コミュニティも、
すべて「コンテンツ」という考え方で、つながることができる。
そういう開かれた感覚を、自分の中に持っていたい。

少し話は前後するが、
2012年、渋谷のタワーレコードがリニューアルオープンした。
オープニングムービーのECDは箭内道彦さん、
そしてCDのクレジットはSOMEONE’S GARDEN。
幅広い仕事を手掛ける「編集ユニット」だ。
当時の僕からすると、広告の、しかも動画の
CDを担当しているのは意外で、ある種、痛快でもある。
その上渋谷は、まさにそのとき僕が通う街だった。

2014年のはじめ、僕は「編集」を学ぶために
いくつかの講座をピックアップし、
自分にとってベストなものを選んだ。

菅付雅信の編集スパルタ塾(第五期)


下北沢の本屋B&Bで、今も開催されている
「菅付雅信の編集スパルタ塾」である。

一年間、24回の授業はものすごい濃密さだった。
菅付雅信さんや、そこで出会った仲間について、
本当は書くべきなのだろうが書ききれない。
しかし、僕が在籍していた第二期の受講生は
最終講義が終わった後にログを残しているので、
その雰囲気を感じることはできると思う。
http://spartajuku2.tumblr.com/
特徴は、受講生全体における
コピーライターの比率が一割を切ることだ。

2014年の終わり、
年賀状のイラストのため大宮講平さんと
飲みながら打ち合わせをした。
テーマは「編む」ということ。

大宮さんは2014年、
ファッションブランドの仕事で
ニューヨークに行ってきたと話した。
印象に残ったのは、ニューヨークの古い百貨店。
そこで、手編みのフィッシャーマンズニットを見たという。

セーターも百貨店も、編集物。
どちらも「編む」もので、そこには人が集う。

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