リレーコラムについて

オフィスよもやま話

大津裕基

去年の今頃、私は人気のない夜のオフィスでひとり頭を抱えていた。うんこをどこに捨てればいいのかわからなかったのである。

常識的に考えてうんこは便器に捨てるものだ。だが、そのとき持っていたうんこはただのうんこではなかった。光ったり動いたりするわけではない。健康診断で提出する予定のものだったのだ。

うんこはその性質上の特性から、取り扱い(特に運搬)に際して細心の注意が払われる。硬質なケースによって密閉されることが多く、私の場合もそうだった。だが、これがいけなかった。臭いを奪われたうんこは翼をもがれた鳥のように私のカバンの奥底で人知れず長い眠りについたのだ。気づいた時には3週間が経過していた。

同封の説明書によると2週間以内の提出が求められており、これはもう処分するしかなかった。私はゴミ捨て場に向かい、そこで冒頭のとおり頭を抱えてしまった。うんこは何ゴミなのか。

私のオフィスでは7、8種類のゴミ箱による徹底した管理が行われ、毎月部署ごとにどのくらい分別できていたか評価される。そのためゴミ捨て場には分別のルールが詳細されたマニュアルが置いてあった。ケースは「燃えないゴミ」で間違いない。同じ材質のCDケースもマニュアルに「燃えないゴミ」とある。問題は中身だ。

なんせマニュアルにうんこの項はない。燃えなくはないだろうから「燃えるゴミ」か。あるいは「残飯」のゴミ箱はどうか。医学的見地からすれば細菌の食べ残しとも言えるではないか。いや待て、そもそもケースから出していいものなのかー

そして私は記憶を失った。ただ、その月のゴミ分別評価がAだったことは覚えている。今年こそは忘れずにうんこを提出したい。

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