リレーコラムについて

ダーリンは中国人:「ごはん食べた?」が挨拶になる国

小森谷友美

中国に行ったばかりの頃、
私の使えた言葉はたった3つ。

谢谢、你好、好吃。
ありがとう、こんにちは、おいしい。

1回目のコラムに書いたように、
谢谢は他人行儀な言葉だから、
だんだん使用頻度は下がります。

すると残りの武器は、你好と好吃のふたつのみ。

ダンナの友達など向こうで会う人にはかならず、
「你好」と世界共通言語「スマイル」で挨拶をしていました。
そして食事が運ばれてきたら、
ひと一倍「好吃」を繰り返しました。

そんな私を見て、ダンナが衝撃的なことを教えてくれました。

「中国人ってね、友達同士は『你好』って言わないんだよ。」

ガーン!
谢谢に続き、你好、お前もか!

日本でもそうなのですが、
あまり友達同士で「こんにちは」って言わないですよね。
「おつかれ〜」「元気?」とか別の言葉で言ったりします。
男の人同士だと、「おう」でしょうか。

それでは中国人の場合は
友達同士、なんと挨拶し合うのでしょう?

私は中国で中国語を習いはじめた頃、
どの先生からもかならず授業の最初に
「朝ごはん食べた?」と聞かれました。
あまりに聞かれるので、みんな本当に食欲があるなあ、と思ったほど。
(先生がちょっとポッチャリしていたせいもあるけれど)

日本では「おなかすいた」とか言い出さない限り、
学校とか会社で出会い頭に「朝ごはん食べた?」と
聞かれることってありません。

そうなんです。
中国では「こんにちは」のかわりに
「ごはん食べた?」と挨拶することが多いのです。

聞かれたほうは、食べた場合は「食べたよ」とこたえ、
そのあとは「何食べたの?」となり、
「餃子」とか答えれば「どこで?」と、
次から次へと会話が弾んでいきます。

もし「まだ食べてない」と答えた場合も、
「健康に悪いから早く食べな」と気にかけてくれたり、
おすすめの小籠包の店を教えてくれる人もいました。

ダンナの故郷の武漢では、
「まだ食べてないよ」と言うと、
「それなら家で一緒に食べよう」となることもあるんだそう!

さすが、身内に手厚い国(=おせっかいの国)、中国。

こんなふうに、中国人の食を大事にする気持ちは、
日常のいたるところに潜んでいました。

たとえば仕事中どんなに忙しくても、
中国人は12時きっかりでごはんに出かけます。
デスクでカップラーメンを頬張る中国人、
あまり見かけませんでした。

そして地下鉄の駅にはかならず、
忙しいビジネスマンとか地元の人が簡単に食事を取れる
「朝食専門」の屋台がありました。

売っている朝食は、ナンみたいな生地のパンに
目玉焼きとジャガイモの炒め物とソーセージが
挟まっているような簡単なサンドイッチ。
1個40円とものすごく安いのですが、
朝これだけを営業して月30万円以上稼いだ人もいるから驚きです!

そんな風に食を愛する国なので、
私の第3の武器「好吃」はものすごく歓迎されました。

とくに多くの日本人が苦手とされる臭豆腐や
激辛の炒め物、ゲテモノ系(カエルやハトとか。笑)を
「好吃」と食べた日には、みんな大喜び。

私も、納豆をアメリカ人がおいしがってくれたら嬉しいし、
と思って頑張って食べました。

ただ、ひとつ日本人と違うと思ったのは、
日本人は出されたものに対しなんでも
「おいしい」と言うけれど、
中国人は絶対にそうは言いません。

相手のことを思うからこそ、
「これはちょっと塩を使いすぎだね」
「もう少し煮込むといいかも」
など正直に伝えます。

今、中国で住んでよかったことを聞かれたら、
間違いなくベスト3に入るのは中華料理との出会い。
麻婆豆腐とか餃子などおなじみの料理はもっとおいしいし、
日本人がまだまだ知らないおいしい料理が、その他無限にあります。
365日、毎日違う料理を食べられる国って、すごいことです。

そんな国なので、中国の若者が女性を口説く時は、

「你是我的菜」(=直訳:君は僕の料理です)

と言ったりもするそうです。
たくさんいる女性を中華料理の種類とかけ、
その中でも特に君がタイプだよという意味なんです。

中国人のコミュニケーションの真ん中にある、食。
私とダンナをつなぐもののひとつにも、
なっているような気がします。

☆明日へ続きます☆

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