リレーコラムについて

ウーさんに教えられたこと

阿部光史

きのうMI:2(ミッションインポッシブル2)の
ビデオを借りてきて、やっと見ることができました。
公開時には、なんやかやで見のがしてしまったのです。
そしてこの映画を愉しむなかで、
僕はまた新しく発見してしまいました。
阿部のリレーコラム、最終日のテーマは、
この映画の監督である、
ジョン・ウーに教えられたこと、です。

この映画の中には
やたらとアクションシーンが詰まっているのは
ご存じのとおりなのですが、
そのほとんどが、常識で考えるとどうにもおかしい、
ありえないアクションでした。
いくら映画やから言うてそれはないやろ
なんぼなんでもそれは無理やで
そんなアクションばかりでした。

普通はそういう都合のいいアクション進行は
映画を見ていてムカつくポイントと
なってしまうことが多いのですが、
MI:2ではそうはなりませんでした。

なぜなら、それらのアクションのひとつひとつが、
エンタテインメントとして、
たいへん面白かったからなのです。

重力を無視し、
タイヤのトラクションを無視し、
人間のジャンプ力を無視し、
常識の約束事を無視し、
つくられたアクションの秩序に
俳優の動きを無理矢理あわせて、
超一級のアクションシーンをつくりだしていました。
しかも、そのすべてがオリジナルで、美しい。

僕はジョン・ウーに耳元でささやかれたような
気がしました。

「お前な、エンタテインメントゆうのは
 こういうこっちゃねん。
 スジが通って全然オモロないもんと、
 スジ通らんでもめっちゃオモロいもんと、
 どっちが観客が喜ぶかいうたら
 オモロい方に決まってるやんけボケ!」

ボケはあんまりだと思いましたが、
こんなコトバが頭の中で鳴り響き、
僕はちょっとどきりとしました。
商品のことがしっかりと説明されている
つまらない広告よりも、
商品説明がほとんどなされてないのに
めっちゃオモロい広告の方が
観客は喜ぶやんけ!という意味が
このコトバに含まれているのを感じたからです。

なるほど。
いや、ちょっと、待てよ。

僕はあわてて、ウーさんに聞きました。
商品のことがしっかりと説明されているのに
めっちゃオモロい広告は
どうなんですか?と。

頭の中のウーさんは真顔で
僕の目をみつめながら答えました。

「そんな広告があったか?」

ううむ。

虚言・妄想はこれぐらいにしまして、
来週からは電通の山中律子さんに
バトンタッチします。
短い間のおつきあい
ありがとうございました。

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