リレーコラムについて

俺たちに裏はない・前編

中川英明

男子寮に生きるものにとって、女子と言えば
それはそのまま2D(二次元)の存在であることを
意味します。

3D(リアル)の女子というのは、
当時のボクらにとって
およそユニコーンと同じぐらい
現実からかけ離れた、ファンタジーな存在でした。

しかし、2Dの女子であっても
そう簡単にお目にかかれるものではありません。
当時の寮の中には、スマホはおろか、
パソコンすらもなかったからです。

唯一あるメディアといえば、
各フロアに置かれた古いテレビのみ。
休憩時間には
寮生みんなでその周りに群がり、
『プリズン・ブレイク』の囚人みたいな目つきで、
教育テレビの画面を見つめる、というのが日常でした。

つまり、男子寮生にとって、
「最も見たい状態の女子の動く姿」というのは、
もはや夢の中で見るしかなかったわけです。

しかし、そんな日常に
風穴の開くような事件が一度だけありました。

ボクは当時、カタチだけの
空手部に所属していたのですが
その道場の天井裏に、ある日
謎の小部屋があることが判明したのです。

誰が、なぜ、そんな場所に
部屋を作ったのかはわかりません。
しかし、たしかに
更衣室の天井の一部が押し戸になっており、
そこをパカッと開けると、
人が何人か入れるスペースがあったのです。
ハリー・ポッターなら、きっと
「ここが秘密の部屋ですか!ダンブルドア先生!」と
叫んだことでしょう。
そして、ダンブルドア先生は静かに言うでしょう。
「ちがうよ」と。

ともあれ、この部屋の存在は、当然、
先生や舎監は気づいていません。
そうと決まれば、ボクらがやることは1つです。
えっほえっほ! ヨイトマケ! ヨイトマケ!
あっという間に持ち込まれた大量のマンガ、お菓子、
CD、ラジカセ…そして。テレビとビデオデッキ。

特に、テレビは今のように薄型テレビのない時代。
にもかかわらず運び込まれたのは、
ブラウン管の、まあまあなサイズ。
おそらく30kg以上あったのではと思います。
それを、非力な中学生たちが、
3メートル頭上の天井裏に一体どうやって持ち込んだのか。
今となっては
ピラミッド建設の謎に並ぶぐらいのミステリーですが
ともあれ、
ボクらは持てる限りの情熱とチカラを結集し、
あっという間に、この世のパラダイスを
天井裏に誕生させたのです。

(つづく)

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