リレーコラムについて

遅筆

遅筆という言葉がある。

書きたくないことを嫌々書くな、書きたい言葉だけ、書きたい事だけを書けとコピーライターの先輩に言われて以来、遅筆になった。

というのはウソ。たぶん、最初から遅かった。

〆切ぎりぎりの言い分けもあり、遅筆なコピーライターですと自己紹介したら、予想外に相手が驚いた。そんな言い方があるのかという。大辞林を引いて見せた。でも、よく商売として成り立っているなという驚きだったのかもしれない。

TwitterやFacebookが盛り上がりを見せるなか、オフライン人々の情報アクセスを確保するため、発禁新聞という新聞を発行することにした。厳密にいうと隔週だから新聞を名乗るのはおこがましいが。

あるとき原稿が足りなくて元週刊プレイボーイ編集長の鈴木力氏に相談したら1時間半後、2500文字、面白すぎて刺激ちりちり、ドライブ感満載の原稿が送られてきた。圧倒的な筆の力の前に膝が折れ、こうべは垂れる。原稿は発禁新聞2号に掲載される。発売日は2013年5月16日。一部200円。

先月ニューヨークで会った坂本龍一氏は「あと30年生きる」と言っていた。読みたい本と読む時間を考えたら後30年は必要ということらしい。私も30年で速筆を身につけながら少しでも世の中の誤解を、コミュニケーションギャップを、「よかれと思って悪いこと」を解いていきたい。脱原発の民意を政策に結びつけるためにも、同じ志のみなさん、これからは「30年死ぬの禁止」ですから。

ともあれ。クライアントの思いや貴重な活動を考えながら、 ゆっくり一言一句、主語や語尾をあれこれ考えながら一文を百通り以上考えるのは楽しい。そのために許された時間の貴重さを噛み締め、低空飛行ながら、ソーシャルコピーライターの仕事が続く幸運に感謝する。

遅読という言葉もあるだろうと思ったら、なかった。速読はあるのに。

味読、嚼読、玩読、精読、熟読、じっくり意味を噛み締める読み方を表現する単語は多様にある。でもこの頃はあまり使われないものも多い。
いっぽう速読、摘読、いま流行のこの方面の単語は逆に辞書の上では少ない。

楽読、という単語もある。(汝聖書を楽読せよ、と「基督信徒の慰」で言ったのは内村鑑三だ)。広告は楽読してもらうための技術だから、民主主義には欠かせないのですよ。だって有権者が政策や議員を選択して、主権者としての意志を政策に反映させるには、合意形成が、市民による政策提案が行き渡り、批判や議論が集積しなくちゃいけないわけだから。楽じゃないとダメでしょ。

今日も情報の分配、ブンパイ。これから69(ロック)の会。毎月9日は69の会。集まって話して質問して、社会が進む。今日は、金子勝氏、香山リカ氏、湯浅誠氏、鈴木力氏、飯田哲也氏、山田誠氏、竹村英明氏ほか。今日はおいしいお弁当をみんなで一緒に食べるのです。読むだけじゃつまらない、時間を共有するのが大事。だって同じ時代に生きているのだから。よかったら毎月9日やってますから、来てください。

マエキタミヤコ

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