リレーコラムについて

桜の葉っぱみたいな仕事

田中幹

 ある人が言った。
 
 桜は紅葉の方が美しい。

 花が満開の春の桜よりも、葉っぱが紅葉した秋の桜の方が数段美しいと彼は言うのだ。

 俺も秋の夙川を歩くときは、彼と同じ気持ちになる。

 俺はいま家族と夙川の近くに住んでいて、ここは絶好の散歩コースだ。
 ちなみに俺はこの川沿いの道を二人の息子(5才と2才)と散歩するとき、息子たちを台車に積んで荷物のように運ぶ。
 この奇異な散歩スタイルは、俺が息子とガレージの中で台車にのって遊んでいたとき、全くの偶然から発見されたものだ。台車でふたりを積んでそのまま街を一周したらどうか?まさか、それが習慣になるとは。
 通行人とすれ違うたびに笑われるので、いいかげんやめたいのだが、子供たちはやめさせてくれない。
 夙川は一年中風景がきれいで有名だが、やはり名物は台車で散歩する父子だろう。
 人でごったがえす桜の季節には、この引越し作業のような散歩はさすがに不可能だが、紅葉の季節となると、人通りが少ない。
 蛍光オレンジの光を放つ桜の葉っぱの下を、俺たちは台車で進み、時々笑われながら秋を堪能するだろう。

 俺の仕事はCMプランナーで、とくにこの広告という世界では、世間の注目は満開の桜に集まる。
 だが、「桜」仕事が全てではないはずだ。
 秋の「桜の葉っぱみたいな仕事」もあっていい、と思う。
 そっちのほうが時に数段美しい。

 てなわけで、昨日の「ももたろう」につづき、今日はP・J・ピースという主にB級映画の監督の作品をおすすめしたいと思います。「スモーキン・エース2」とか「山猫は眠らない3」、「フロム・ダスク・ティル・ドーン3」とかのDVDが、ビデオ屋の棚の下の方にあるので良かったら観て下さい。流行ったなんかの2とかなんかの3を、さらに低予算で作るという「桜の葉っぱみたいな仕事」っぷりがP・J・ピース監督の人生観を培ったのか、彼の描く主人公は巨大な組織の汚れ仕事を任されつつも寡黙に正義をつらぬくタイプであり、観終わった後、自分もいいことをしたような気分になれます。「スモーキン・エース2」がおすすめですが、「山猫は眠らない3」はようやく涼しくなりはじめた昨今、初老スナイパーが秋の訪れを感じさせてくれることと思います。
 ただ「山猫は眠らない3」、酒を飲みながら観たせいか、大半ウトウトしてしまいました。
 眠ってるやん。

 それではまた。

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3289 2012.09.27 カブトムシ
3288 2012.09.26 不毛の大地
3287 2012.09.25 桜の葉っぱみたいな仕事
3286 2012.09.24 前ピン、奥ピン
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