リレーコラムについて

潤平

上田浩和

潤平から渡されたバトンはなんかいい匂いがする。
もう何百という人の手を渡り手垢にまみれたバトンのはずなのに、
潤平のあとだからかミントの香りだ。
今週のリレーコラムは、
大学からの友人である渡辺潤平くんから
バトンを受け取った上田が担当します。
どうぞよろしくおねがいします。
潤平はむかしからそうだ。
むかしからいい匂いをさせている。
むかしから颯爽と時代の最先端の空気をまとっている。
大学時代にキックボードが流行ったときは、
大学構内をキックボードで走り回っている潤平に遭遇した。
転べ!と念じても転ばなかった。
潤平には、生まれ持ったバランスのよさがある。
茶髪が流行れば茶髪で現れ、
スニーカーが流行ればスニーカーを誰よりも上手にはきこなし、
メガネが流行れば視力を悪くしてでもメガネをかけ、
短いズボンが流行れば潤平のズボンも間髪いれず短くなった。
どんな流行が来ても、潤平はバランスよく自分のものにしてきた。
ただ一つの流行をのぞいては。
ドラマ「若者のすべて」のなかで木村拓哉がロン毛を披露し、
世の中の男の髪が一気に伸びたときだけは、潤平は波にのれなかった。
なぜか。潤平は天然パーマだからだ。
天パの男がいくらロン毛にしても、木村拓哉みたいにはならない。
あのときはじめて流行の背中を見たよ、
と今でも飲むと潤平はそう言う。
それまで流行と二人三脚、
流行の横顔しか見たことがなかった潤平にとっては、
よほど屈辱的なことだったのかもしれない。

そんなさまざまな流行の合間で、
潤平とぼくはそれぞれ別の広告代理店に入社し、
何年かしたのち潤平はフリーになった。
それからしばらくしてアフロが流行ったときがあった。
そのとき潤平は借りを返すように髪を伸ばし、
そしてロン毛になった。
天パのロン毛は、つまりアフロだ。
そのアフロは、
パーマ液臭い人工アフロにはないナチュラルさを持ち、
潤平の童顔をさらに引き立てていた。
当時のドラマ「CHANGE」のなかでは木村拓哉もアフロにしていたが、
潤平のほうがよっぽど似合っていたと思う。
それからだ。潤平の活躍がはじまったのは。
今では広告系の雑誌で潤平の携わった広告物を紹介しない号はないし、
広告系の雑誌以外でもその顔を見かけるようになった。
うっすら文化人の風格さえ漂わせるようになった潤平は、
ついに流行より一歩先に立ったのかもしれない。
「そこから振り返ったら何が見えるの?」潤平にそう聞いてみたら、
「流行の顔が正面から見える」と答えるだろう。
でも「どんな顔してるの?」と聞いて、
「俺に似てる」なんて言うようになったら、
「調子にのるんじゃない!」と殴ってやったほうがいいだろう。
それが友情というものだし、
やさしくすることだけがやさしさじゃないよ、
と前田敦子も言ってたような気もするし。

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