リレーコラムについて

紛れもなくこれもコピーなんだな(4) ブーム、ブーム

碓井智

■黒川博行さんの「株式会社」論■

「これはどういうわけや。おれは五千株、きみは三千株しか持っていないのに、

俺のツヅラのほうが小さい。納得いかん」

「それはね、あんたが<欲張り爺さん>やからやんか」よめはんは笑う。

「するとなにかい、きみは<花咲爺さん>か」

「ちがう。<花咲姉さん>や」

「えらい老けた姉さんやな」

「誰にものいうてんの」

大阪を代表するハードボイルド作家・黒川さんが夕刊フジに連載してるエッセイを

単行本にまとめた「大阪ばかぼんど」。

その中に、株を所有している会社から送られてきた株主優待の箱が、

自分よりも持株数の少ない奥さんの方が大きくて言い争いになる話がある。

五千株と三千株、そりゃ、黒川さんが納得いかないのもわかるわかる。

他にも、黒川さんは、独特な語り口で、「株式会社」論を奥さんにぶちまけたりしては

軽くあしらわれるのですが、要は黒川さんは、生粋のギャンブラーであって

株式投資も、麻雀と同じ、賭け事の一種としてやっておられる。

なにかと納得いかないことがあると、奥さんに企業社会のおかしな点を

ぶちまけるのですが、これが結構スルドイところをついてきて、

う〜ん、投資家=ギャンブラーの正論って、恐ろしいほど正しいと

感心してしまう点が多々あります。大半は、株価下落に対して、

「責任者をだせ!」的な言いがかりですが(笑)。

■コピーを書ける悦び■

ボクが、拙いながらも広告コピーを書けるのも

「企業」の皆さんが「広告」なり「広報」なり、「事業活動」に関わる情報発信を

してくださるからこそ。だから、企業のゴーイング・コンサーンこそ

最低限のコピーライターの責任だと思ったりする。

単純に、モノが売れない、と、会社も潰れるわけだから、

モノが売れないコピーや広告は、やはり、株主にとっては、最も困った広告制作者

ということになるんだろうな。

株主総会で、広告制作者の選定について議案になる世の中になったら、

イヤな世の中だけど、それぐらい広告はこれからますます企業にとって重要な

ものになっていくと、実は信じている。

でも、それは、むしろ単純に、モノが売れるかどうかではなく、

企業の「情報発信」全てであり、発信すらしない企業におけるコミュニケーション全般が

コピーライターの業務範囲全般に拡大されていくのだろう、と。

企業だけではなく、日本社会のコミュニケーション全般が、結構、広告産業化されていく

と楽観している。

そのとき、必要とされるのは、「話のわかりやすいコピーライター」で

スピードが速いとか、刺激が強い、というのは情報化が高度化すればするほど

あまり優先度は高くならないのではないかと思っている。

日本の人口が少なくなっていくと、量的争いからはどんどん解放されていって

質的争いになっていくだろうし、少ないブランドをいかに確実に

少ない社員で収益にできるかが、企業にとって大切なコンピタンシーになって

くるだろうから。って、今、考えました。

説得力なかったら、ごめんなさい。

生まれてすいません。

■オカモトさん■

ボクの席の横には、オカモトさんという

実は、このコラムのバトンを渡してくださったオカノさんの

中・高の同級生の方が座っておられます。

オカモトさんは、元・公認会計士で(元じゃないや、今も会計士だ)

電通に転職されてきて、ずっと経理におられたのですが

昨年、転局されてきて、なぜかコピーライターのボクと同じチームにおられる。

立ってるものは親でも使え、と教え込まれてきたボクは

朝から

「株価って、なんで高くないとイケないんですかあ」とか

「キャッシュフローが重要って、お金が大切って、当たり前のこと言ってんですかあ」とか

パソコンでなにやら書類をしあげようとしているオカモトさんの邪魔を顧みず、

素朴な疑問をぶつけては、いろいろな教えを受けているんですが

まあ、要は、会計士のひととコピーライターが机を並べて仕事するのも

ちっとも不自然ではない世の中になってきてるのだと思うのです。

会社の方針といえば、なにか深い狙いがあるのかもしれませんが

あるいは単なるモルモットなのかもしれませんが。

でも、失敗しても、広告会社というものは大きな設備投資とかを伴わないので

何でもやってみたらいいじゃん、どうせ膨大な特別損失につながった、なんてことには

ならないんだから、っていやあ、そうなのかも。

あまり、スクラップ&ビルドがひどすぎると、「もっと真剣にやれ!」と

株主から怒られるかもしれないけど。

電通も、上場企業なので。

■電通最高のコピーライター■

「われわれの仕事は人間の知恵、才能、才覚、技能だけがすべてだ。

 いいかえれば、人間そのものだ。会社は、そのAEなり、コンタクトマンなりを
 
 製造する大工場だ」

昭和29年に、電通の第四代だった吉田秀雄が訓示を飛ばしていた。

企画する人をまだ製造していなかった時代みたいだけど(笑)

人間製造の大工場とはよく言ったものだな、と。

吉田秀雄といえば、「鬼十則」が有名だけど、

こんなのもある。

タイトルは、「ブームを創れ」。

一、ブームを創り
  
    ブームに乗れ

一、失敗を怖れるな

    失敗と思ったら直ちに
  
    回れ右

    倍の力でまき返せ

一、さて働いて働いて

    働きまくれ

    お互いのために

    みんなのために

なんかリズムがあるのが、この人の天才性のような気がする。

やはり、社員を鼓舞するには、リズムがないと。

こんなの知ってる人、いまの社員では、ほとんどいないと思うけど。

最後の方は、永田町方面におられる方々に、是非お贈りしたいなんて言うと

また、つまんない話になるから、言わない。

広告のコピーは、どうしたっていづれ旧くなっちゃうけど、

(ほんとうのことを言った、本質コピーは旧くならないともいえるけど)

仕事の本質をつくコトバは、う〜ん、全くいまでも鼓舞されるぞ。

ブームってのは、流行ではなく、なんていうんだろ、「大きなうねり」みたいなもので

なにより、今の日本に元気であることを、

「がんばろう」とかではなく、働ける奴は働いて働いて、みんなのためになれ

っていう感じが、心に響く。

失敗したら、回れ右

ですまされるのもいい。

■どんな「つづら」を生み出せるか

黒川さんは、企業から株主に送られてくる優待の箱を

「つづら」といった。

広告制作者から、企業へ送られるコミュニケーションプランのパッケージも

まさに「つづら」なんだろうと思う。

その中身は、時代によって変わる。

でっかいテレビと、新聞がいっぱいはいってた時代もあれば

雑多なデジタルのガジェットが増えてきて、テレビもあれば、チラシもあれば、

グッズもあるという「つづら」にもなっていく時代もあるのではないか、と。

あ、こりゃ

いいこと言おうとしてちょっとすべってるパターンだ。

コラムに、教訓めいたことを盛り込んではいけない

という格好の事例だわ、こりゃ。

義理の父母が、夙川というとなり街に引っ越してこられるのだが、

いまの家の整理をしてたら、古い切手のストックブックがたくさんでてきた

ということで、婿殿の(正確にはムコにはなっていないが)私に

ドサッと記念切手のはいったブックがつまった箱をにプレゼントしてくれた。

いま、「つづら」というと、これがいちばんボクにとっては嬉しい「つづら」である。

「月に雁」も、「見返り美人」もないけれど、「蒲原」や「ビードロを吹く娘」はあった。

しかし、切手の価値って、信じられないほど暴落している。

郵政省の切手政策が間違っていたのだろうか。

「責任者でてこい!」

である。

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