第一回目再録「昏倒」
こんにちは。
今日から5日間、このコラムを担当することになったサン・
アドの佐倉です。禎サンから、いきなりバトンを託されて、
結構焦ってます。とにかく、できるだけ毎日書き込むよう
に頑張りますので、よろしくです。コラムなどという大層
なものではなく、単なる与太話になりそうですが、まあ勘
弁してください。
で、第一回目の今日は、僕が倒れた話から。
今年の春、それは唐突にやってきました。その日は一日中、
TCCの二次審査会でした。もう泥水みたいに疲れ果てて
(肉体的にも精神的にもマジキツイんです審査会)会社に
戻って来たのが午後6時くらい。じつは審査の最中ずっと
調子が悪くて、審査会場のトイレで吐いたりしてんです。
この時はまだ「しつこい二日酔いだなぁ」なんて呑気に思
ってたんですね。
そんなボロ雑巾のような状態で会社のエレベーターに乗り
込み、オフィスのある9階のボタンを押したところまでは
憶えてます。あとの記憶が一瞬だけポッカリ抜け落ちてい
ます。けたたましいブザーの音で目が覚めました。エレベ
ーターのドアが、倒れた僕の足にぶつかって跳ね返り警告
音を鳴らしています。昏倒しちゃってたんですねエレベー
ターの中で。時間にしたら数十秒。映画みたいです。
はじめのうちは、わりと冷静だったと思います。デスクに
戻る前に、まず、トイレに駆け込みました。顔色のチェッ
クです。鏡の中に写ったのは、いつもの二日酔いの赤ら顔
ではなく、もう能面みたいに白っちゃけた顔です。自分の
顔色がこんなになるなんてはじめてでした。冷たいイヤな
汗も腋にかいています。
気絶するという経験は結構あるのですが、それは鉄パイプ
で頭を割られたり、ブロックで顔面を強打されたり、首を
絞められて落ちたり。そういう打撃系の外的要因によるも
のばかりで、こういう気絶は生まれて初めてでした。この
辺から心の中は、ちょっとビビリモードに入ってます。
それでも何事もなかったような顔をして自分のデスクに戻
りました。そして、誰にも気づかれないように、ケータイ
のメモリーから、サン・アド御用達のH病院の救急番号を
ピックアップしてこっそり連絡をしました。このH病院は
会社から近いこともあって、うちのスタッフもよく利用し
ていたんです。二日酔いにメチャ良く効く点滴とか、自律
神経失調症の薬の処方箋を書いてもらうとか。そんなノリ
で今夜も点滴一発でなんとか誤魔化そうというか、済まそ
うと思ったんです。
受話器の向こうでは、僕の要領を得ない容態の説明にイラ
ついた看護婦さんの素っ気ないのにどこかザラついた刺々
しい声が虚しく響いています。
この日から4日間、冗談のような僕の入院生活がはじまる
なんて… (つづく)