リレーコラムについて

女性を信じちゃいけない話。

宮寺信之

 そのマフラーは、紺地に臙脂の縞が入っていた。
買ってから2回しか使っていなかった。
そのマフラーをなくした日から、いろんなことがおかしくなった。
仕事が変なことになった。キャッチフレーズをとても気に入ったから
急遽出稿が決まったと聞かされていた新聞広告が、
出稿されたあとになって、別のキャッチを考えてください、と言われた。
新しいキャッチは、いつ何に使うんですか?
予定はまだありません、と言われた。
別の仕事では、まっすぐ目を見つめられ、「あなたとは、一緒に
仕事していきたかった」と微笑まれた直後に、その人が席を立ち
会議室を出て行った。その仕事はそれきりになった。
仕事以外でも妙なことが起きた。車のルーフバーが消えた。
前3分の1だけが壊したり悪戯したような痕もなく、
キレイに、ある日突然消えていた。ディーラーに行こうと車に乗ると、
カーオーディオに「デッキエラー」の表示。CDがかからなくなった。
ケータイのバッテリーがすぐ切れるようになり、
新しいバッテリーに替えてみてもダメ。
PCのバッテリーもチャージできなくなった。
 私は、なぜ、あのマフラーを買ったのだろう。あのマフラーは、
店頭で、同じデザインの色違いの物たちと一緒に並んでいた。
最初に私はグレー地に黄色の縞のほうを手に取った。
鏡の前で首に巻いてみた。悪くない。
でも、隣にある、紺地に臙脂の縞のマフラーが気になった。
私は、私が直接知る人物の中で最も成功している
マフラー好きの人物の言葉を思い出した。
今年は、赤ですよ。赤が入ってるマフラーが最高運です。
そして、私は、あのマフラーを買ったのだ。(つづく)

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