リレーコラムについて

3杯目 セックス・オン・ザ・ビーチ

牛島彩

ああこれ?これはね、セックス・オン・ザ・ビーチというカクテルです。
こうして何杯か飲んでいると、最後のほうに色のきれいなカクテルを
眺めたくなっちゃうんですよね。オンザビーチって、
店によってオレンジだったりグリーンだったりさまざまだから、
初めて行く店で、ここのはどんな色かな?とオーダーするのも楽しいです。
ほら、きれいでしょう。この店のオンザビーチ、淡いピンクオレンジが、パールみたい。

ええ、お酒はねえ、とても好きです。
お酒を好きな人って大きく分けて、酔う感覚や酒場の雰囲気が好きな人と、
お酒の存在そのものが大好きな人に分かれると思うんです。
わたしはお酒そのものが好き、と言って良いと思いますが、でも考えてみると
本当にお酒の「味」が心底好きなのかどうか、ちょっと分からないんですよ。
こんなにおいしいカクテルも、じゃあもしこれがノンアルコールでも飲むか、
というと、ソフトドリンクならオレンジジュースや牛乳を選ぶ気がする。
でも、ただ酔うために飲むわけでもない。そんな日もなくはないけれど。
……お酒の価値は、時間。
飲む夜は、いわば一遍の物語を紡ぐ一夜だと思うんです。
カウンター越しにバーテンダーが、一緒にわたしのストーリーを考えてくれる、
そんなバーが好きです。一杯目に始まって、次は何にしよう、
次はどうしようとバーテンダーと相談しながら、その日の自分だけのための
おはなしを描き上げて行くんですね。それが楽しい。
一人で飲みに行くことが多いので、こういう飲み方が習い性になったのかも。
作り手の、純真な情熱がお酒に溶け込んでいて、飲み手の琴線を揺さぶるんです。
作り手の思いや考えを映し出し、熟成時間という愛をたっぷりと溶かし込んだ、
含蓄ある人生のようなお酒との出逢い。それはまるで、宝石を呑む時間です。
わたしはお酒の、そんな物語が好きなんです。
モルト然り、バーテンダーの考え方を投影したカクテルや水割、ロックも然り。

だから、雰囲気や品揃えより、提供してくれるバーテンダーの人柄や
お酒に向かう姿勢で、飲む店を決めています。
ね、だからわたし、この店が好きなんですよ。
あはは、呑み助が熱く語っちゃった。
所詮キチキチ、高く飛んでも山は山ですけどねえ。
マスター、最後にラフロイグのハイボールを。…もう、笑っとらんと、早く。

呑み助 torys@myad.jp

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