リレーコラムについて

危険な思い込み

中澤昌樹

この仕事を10年もやっていると、
大した実績もないのに、
学生さん相手に話をしたり、
新人たちのメンターを頼まれたり、
ということが増えてきました。

で、後輩たちの作品を見て、一言。
ここが良くないねとか、
こうすればもっと良くなるんじゃないかとか、
しかもそのアドバイスがけっこう的確だったりすると

「さすが先輩!」

みたいな空気になって、
それがまた、気持ちよかったりするのです。

そうすると次には、
なんか自分には「企画を見る」という才能が、
あるんじゃないかという気になってくる。
そこまでならいいのですが、悪いことに

「もちろん、自分はそれ以上の企画がいつでも出せる」

というような、危険な思い込みに陥りそうになって、
慌てて目を覚ましたりするのです。

なぜそれが「思い込み」なのか。

企画を「見る」ということは、
企画を「考える」ことより、はるかにカンタンだからです。

子供が描いた犬の絵を見て、
ここをこうすればもっと犬の絵になるよ、
ということは言えても、
真っ白な画用紙に、0から犬の絵を描くのはすごく難しい。
(絵のうまい人は、なんか違う例えを考えてください)

とにかくそこに「形」があれば、
いいとか悪いとか言いやすくなるのは自明のことなのですが、
何度も批評を繰り返しているうちに
それを忘れてしまって、
まるで自分自身に才能があるかのような
「錯覚」を起こしてしまうのです。

(時々、そのことに気付かないまま偉くなってしまった
宣伝部長さんを見かけたりしますが、それはさておき)

だから、意味不明でも、未完成でも、
とにかくたくさんの企画を考えてくる若手を、
私は無条件に、尊敬しています。

口では「う〜ん」とか、「これはないなぁ」
なんてもっともらしいことを言いながら、
実は心の中では「負けた」と思っていたりします。

どんなに不恰好でも、
はじめに「それ」を考えることが、いちばん辛くて、
いちばん尊いことだから。

そんなことを、自分自身に
毎日のように言い聞かせている、今日この頃です。

さて来週は、
いろんな意味で笑いの神が憑いている男、
でもコンパではすっかり無口になるかわいい奴、
電通関西の山崎英生くんの登場です。
月曜日から告知してあったので、すごく面白いと思います。

それでは、1週間のお付き合い、ありがとうございました。
(メールアドレスとか、なくてもいいですよね)

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5691 2024.04.20 長谷川輝波 #マイナス5キロジーンズ@韓国の街中
5690 2024.04.17 長谷川輝波 言葉オブザイヤー@新宿ゴールデン街
5689 2024.04.12 三島邦彦
5688 2024.04.11 三島邦彦 最近買った古い本
5687 2024.04.10 三島邦彦 「糸井重里と仲畑貴志のコピー展」のこと
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