リレーコラムについて

ウンコ

永友鎬載

同業の親しい友達で、ほぼ毎日、
「いまウンコをしてる」というメールを
してくる男がいます。

最近のメールをいくつか引用すると、

「いま極上ウンコ中」

「いま実家ウンコ 泣きたい」

「固めウンチにトライしてる」

などなど。基本的にこの類のメールには、
僕は返信をしていません。

ただ、あまりにもしつこいので対抗して、
当時買ったケータイについていた最新のGPS機能を使い、
「永友鎬載ここにあり」と言わんばかりに
今自分がウンコしているトイレの位置を教えてあげたことがあります。

また、そいつから電話がかかってくるときを
見計らってトイレに入り、「今、ウンコしてるから」と
言って電話を切ったことも。

もう、あほらしくなって、やめてしまったのですが。

ところで、ウンコで思い出すのが、開高健さん。
もうつぶれてしまったのですが、かつて地元の料理屋の看板に、
署名入りでこう書かれてありました。

この店では
いい雲古の
出るものを
食べさせてくれます
保証します

開高健

四万十川に撮影で来られた開高さんが
その料理屋に立ち寄った際、
お店の人に頼まれて書いた文言なんだそうです。

新鮮な肉や魚介を使った
とても美味しい料理を出す店なのですが、
いい言葉だなあと思いました。

「ウンコ」ではなく、「雲古」と表現することで
どこか詩的で、きれいだなあと思わせられる。

今日のコラムを読んでいるであろう前述の友達のために、
この話を書きました。

さて、本題のウンコです。

僕が以前所属していたパラドックス・クリエイティブのメンバーと
河口湖のマラソン大会に行ったときの話を、今日は書こうと思います。
あれからもう3年が経つのかな。

たしか、忙しいときだからこそ体を鍛えよう的な風潮が
社内で起こっていた時期で、「小旅行も兼ねてフルマラソンを走ろう」と、
10人くらいで河口湖の大会に出場する運びとなりました。

僕はその進行役にいつの間にかなっていて、
そこで、会社近くのレンタカー屋に問い合わせ、
大きなワゴン車を借りました。

で、いざ出発の朝。
あの日はとてもすがすがしい、
きれいな秋空でした。

会社がある表参道に集合したメンバーは、
ワゴン車に乗り込みました。

車内はマラソンよりも、
温泉とかごはんの話題で持ちきり。
ちょっとした旅気分でした。

しかし、僕たちの気持ちとは裏腹に、
車内に異変が起こったのです。

表参道から渋谷に向かう途中で
誰かがつぶやきました。

「なんかさ、くさくない?」

最初は誰かのおならかと思いましたが、
ずっと窓を開けていたので、下水工事現場のにおいが
入ったんじゃないかという話に落ち着きました。

ところが。

車が渋谷を過ぎても、まだにおいがたちこめています。
みんな不審がっていました。
なんかおかしいぞ。

後部座席に乗っていた僕は、まわりを見渡しました。

すると。

なんと車の入り口に、ウンコが落ちてあったのです。

第一発見者である僕は、思わず目をそらしました。

まさか、レンタカーにウンコなんてあるわけないじゃん。
そう思いながらも、おそるおそる、再確認しました。

動かざること山の如し、と言わんばかりの
人糞と思わしきウンコが、やはりそこにあるのです。

そこで、勇気を振り絞って言いました。
僕の話を落ち着いて聞いて、と。

みんなが振り返ります。

話しました。そこにウンコがある、と。

えーーーーー!と車内はパニックに。

しかも誰かが踏んだあとがあり、
確認したところ、後輩の鈴木くんでした。

その後すぐ、僕がレンタカー屋に電話することになりました。
きちんと清掃していないのかと、もう怒り心頭です。
なんて言って怒鳴ってやろうと思いました。

ただそのとき気づいたのですが、
「ウンコ」ってクレームをつけづらいんです。
ウンコって言葉が面白くて。

電話のとき、強い口調ながらも僕は若干笑ってしまいました。
「え、ウンコがあったんですか」と驚いた
レンタカー屋の兄ちゃんも、少し笑っていました。

その後、ラブワゴンならぬウンコワゴンに
乗った僕たちはレンタカー屋に行き、
車を交換してもらいました。

そこでははっきりクレームをつけました。
もちろんレンタカー代はタダにしてもらいました。
当たり前です。鈴木くんが履いていたナイキのシューズが
エアウンコマックスになったのですから。

ただそのとき、議題にあがったのは、
このウンコの値段です。

レンタカー代がおよそ4万円とすると、
そのウンコの価値は4万円ということになります。

でも鈴木くんはウンコのおかげで、
精神的な苦痛をこうむったわけですし、
一足しかないそのスニーカーで次の日に
42.195kmを走らなければならないわけです。
そう考えると4万は安すぎなんじゃないか。

なんてことをうだうだみんなで話し合いましたが、
まあ早く行かなきゃいけないのもあって、
そこで話を終えました。

結局、次の日のマラソンでは社長が完走し、
何の運動もしていなかった僕は
27kmでリタイアしました。

鈴木くんは37kmで力尽きました。

あの日のウンコは、僕たちにとってpricelessです。

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