リレーコラムについて

コピーライター夜明け前

中村直史

リレーコラム。
一生自分には縁のないものかと思ってました。
まわってくるものなんですね。

はじめまして。
中村直史(なかむらただし)といいます。
一週間、よろしくおねがいします。

コピーライターになる前は、長いこと学生をしていました。
最後の3年間くらい、文化人類学なるものを勉強していたのですが、
ひとつ印象に残っている授業があります。
それは、「ネイティブ・アメリカン」と名付けられた授業でした。
ざっくり言えば、アメリカ先住民たちの文化を学ぶという内容です。
クラスの先生は、実際にアメリカ先住民と暮らし、
精神的トレーニング(!)を受けた女性。
ある日、その先生が「今日は自分のアニマル・スピリットを見つけましょう」
と言い出しました。ネイティブ・アメリカンの多くの部族では、
各個人にそれぞれの「動物の守り神」がいるという考えがあります。
ある宗教的儀式を経て自分の守り神を知るのですが、その儀式を
クラスでやろう、ということに。

まず、ぼくら学生が教室の床に仰向けになって、
リラックスするよう言われます。
先生は、特別なお香をたき、ネイティブ・アメリカンから
譲り受けた摩訶不思議な太鼓をたたき、ぼくら10人程度の学生を
瞑想の旅へと誘います。細かいことは忘れたんですが、
先生の声に従って心の中にイメージした暗闇の中をずんずん進んでいくと、
最後の部屋に、守り神がいることになっているんです。
で、ぼくの場合もちゃんといたんですね。ネズミがいました。
なぜか、赤いちゃんちゃんこを着たネズミ。

「さあ、目を開けて」と先生。
どんなアニマル・スピリットと出会ったかクラスメートが発表しあいます。
けっこう、みんなかっこいい守り神なわけです、これが。
「わたしは、狼でした」とか。
「ぼくは、コンドルでした」とか。
発表しながら、「おいおい、おれだけネズミかよー」って感じでした。
しかも、しょぼくれたネズミだったんです。
そこまで言わなかったんですけど。

もひとつ、クラスのみんなには黙ってたことがあって、
それは、赤いちゃんちゃんこを着たネズミの頭上には、
たくさんのネズミたちが首を吊った状態で
洞くつの天井からぶらさがってたんです。もう何百匹も。
それを、赤いちゃんちゃんこネズミは、一匹一匹縄をほどき、地面におろし
(ネズミたちはなぜかみんな生きているんです)、それで「走れー!」って
叫んで、洞くつの出口を指し示すのです。

この話が何を意味するのかは、ぜんぜんわからないのですが、
そのとき漠然と、いつか仕事をするようになったら、
首を吊ったネズミたちを一匹一匹地面に下ろすような仕事がしたい
と思ったのを覚えています。どんな仕事や!って感じですが。

月日は過ぎ、ひょんなことからコピーライターになりました。
そこに、ネズミたちを救うような要素があるのかどうか。
まったくのナゾです。

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