リレーコラムについて

広告以外の世界で、コピーやプランニングで人に喜ばれる話(その2)

武田斉紀

みなさん、こんにちは。

 TCC事務局の佐藤さんからは、「お休みの日は書かなくていいですよ」と言っていただいたのですが、なにぶん書くのが好きなもので・・・。

 昨日に引き続き、「広告以外でもコピーやプランニングの力で喜ばれる世界があるんです」というお話の第2弾です。

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●先日、初めて正式に「歌詞」を書きました。有名アーティストのためではなく、ある会社の社歌として。

●クライアントA社の社長からは、「古クサイ感じの社歌はいやなんです。ミスチルみないなのがいいんだけど。武田さんってそういうのも書けたりします? せっかくだからプロに作曲、編曲もしてもらうと思っているんですけど」。これは初体験のチャンス!「も、も、もちろんです。任せてください!」即答しました。一瞬、桜井和寿さんの顔が自分の顔になったような気が・・・。(桜井ファンの方、すみません)

●「だいたいの字数をください」と作曲家に頼んだら、曲が先にできてしまいました。デモ版を聞くとなかなかよい感じ。がぜん燃えてきた! モチーフとストーリーを固め、多少の字余りくらいならよいかなと書いてたら、作曲家からダメ出しが。「今回のメロディラインはできるだけ字数にはこだわりたいので」。やり直しだー。全体に文字数が少なく、3字+3字なんてところもありました。「わたし・ばかよね」で、すでに字余り。うーむ。フトンに入って、トイレにしゃがんで、電車の中で、指折りぶつぶつ唱える日々。

●その間、話はさらに膨らんで、12月に有名ホテルで行う全社クリスマスパーティでプロのミュージシャンを招いてお披露目することになりました。歌詞作りは予定の2週間を過ぎ、やっと完成。字数も1箇所のぞいて指定どおり。作曲家からは、ばっちりのお墨付きをいただき、いざ先方社長へ。

●今回の社歌作りの話は、A社の社長から「ウチの会社はグループの総合力が強みなんだ。だからグループとしてめざす共通の方向性を言葉にして共有したいのだが」という相談から始まりました。何度かヒアリングをする中から『グループ理念集』を本にすることになりました。

●私の企業内コミュニケーションコンサルティングを進める上でのポリシーの一つに、「社長の言葉を一方的に押し付けるのではなく、社員の視点で伝わりやすい言葉に翻訳し直す」というのがあります。社長の訓示など、眠たくなるだけで100回聞いてもタコすらできません。さらに「言葉にして掲げるだけ、まとめて紙にするだけでは、現場の社員と共有などできない」。

●アルバート・メラビアンという米国行動科学者の調査によると、意思疎通を実現する比率は、言葉で7%、声の調子(トーン)で38%、態度で55%であったそうです。裏返せば、コピー以外、たとえば声のトーンや態度も加えれば、もっと意思が伝わることになります。つまり、絵に描いたモチならぬ、『理念集』にまとめただけでは、絵に描いたコピー。一生懸命夜なべして考えても、よくて7%しか伝わらない。

●(それはたぶん、コピーだけで立つ広告がほとんどなくて、グラフィックだと書体やレイアウト、デザイン。ラジオだと声の質、トーン、間、テレビだと表情やシチュエーションが必要なのと同じなのでしょう。)

●A社の社長にもそのことを何度もしつこいほどにお話していました。『グループ理念集』を作っただけじゃ、何も変わりませんよ、と。社歌の話も、なんだか最初独りよがりな匂いがしたんです。でも「ミスチルみたいなの」というオーダーであれば、ちょっとやってみっかと思ったわけです。

●最初は、自由にやっていいというのだからと、自分の描きたい男女の恋の歌を綴ってみました。でも、できあがってみて、これを社員の人が歌うことを想像すると何か違う。A社は社員を大事にしていて、基本的にクビにしないし、上がった利益は大いに還元する方針。で、20代もいれば、60代までいる。60歳の人がこの歌を歌えるだろうか、覚えられるだろうか。果たしてみんなが喜んでくれるだろうか。

●サービス精神が疼いてきました。男女の歌だけど、社員同士が出会ってみんなが分かり合えるようにも取れる内容にしよう。A社のオリジナルの言葉をサビに入れよう。そうだ、グループの理念のいくつかをさり気なく盛り込もう。社員の人たちが「この歌って社歌らしくないけど、けっこういい歌かも」と言って、ことあるごとに歌ってくれたらグループ理念も自然と浸透していくかもしれない。

●社長に見せて帰ってきた言葉は・・・。しばらく言葉がありません。「さすがですね。さすが、さすがですよ」。どうだーって感じ。本当は、少しだけ反応が心配だったんですが。

●パーティは12月18日。私も特別ゲストとして招待されました。当日、刷り上ったばかりのやさしいイラストで包まれた『グループ理念集』が社員の座るテーブルに1冊ずつ置かれます。そして18時、パーティルームの明かりが消され、生演奏が始まります。社員のみなさんの反応はどうだろう。今からドキドキです。

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 ちなみに、理念集を作るのにはちゃんとプロとしてのお金をいただきましたが、歌詞のお代はタダでいいですと通しました。歌詞については自分にとって、新たなチャンスをいただいたわけですから。

(今日ははいい天気でした。「ハウルの動く城」を見に行きました。では、また明日。)

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