リレーコラムについて

ニューギニアロケ・チン道中日誌4

松木圭三

おはようございます。
今朝の大阪は雨。そして確実に冬の気配です。
今日も昨日のつづき、
クソ暑い南の島のレポートにお付き合いください。
では。

2004年1月末日・本番ロケ/前編(広告会社アカウントエゲゼクティブの回顧)

「エーッ、本物のコテカって、横からナンかヘンなモノ、はみ出てんの?」
「エーッ、村の中はブタの糞だらけ?」
「エーッ、ロケ場所にトイレないの?」
今回このロケに参加するクルーで私だけが、かよわいオンナである。ロケハン期間は忙しくプロデューサーたちにまかせて行けなかったけど、ちらっと小耳にはさんだコピーライターの報告を聞くとイヤな予感がする。交渉がうまくいったのはよかったけど、いかんせんこの企画を考えたアホなコピーライターには二度とシゴト頼むもんか、と思っていたら、出発前日プロデューサーが私を安心させようという魂胆まるだしのウソ笑いをしながらやってきた。
「だいじょぶですって。マルトラップのコテカは事前に日本で美術スタッフに作らせたので、ナンかヘンなモノがはみ出ることはありません。それに、だいたいはみ出ていたらオンエアーできませんからぁ」。
「それも、だいじょぶですって。足場があまりよくないこともありますので、クルー全員にスペシャルなシューズを配給しますので、ご自慢のブランドの靴も糞で汚れませんし・・・。オシャレな長靴ですよおー」。
「もうぜんぜんだいじょぶですって。村のまわりすべてがトイレみたいなもんですから、もう、どこでしたって・・・」。
こっちこそ、このプロデューサーでだいじょぶだろうか、心配になってきた。
とかなんとか言いながら、私たちロケ隊はニューギニア島目指して長い旅に出かけた。日本から、飛行機→クルマ→カバ→ゾウ→馬→ラクダ→ロバ→ダチョウ→キリン→プロデューサーの背中、と乗れるものは何でも乗ってようやく目的地に着いた(気がする)。
その村は朝靄の中にあった。聞きしにまさるその佇まいは、なるほど、神秘的な魔境の趣きである。村に一歩入ると村人たちが駆け寄って来て出迎えてくれた。この部族はダニ族と呼ばれる人たちだそうで、その中でもひときわ威厳のありそうな装飾をしたオトコが近づいてきて耳もとで「ワ、ワ、ワ、ワ、ワ、ワ、ワ、ワ、ワ、ワ、ワ」と唄うように囁く。クルーのオトコどもも「ワ、ワ、ワ、ワ、ワ、ワ」とうるさい。なんでも「ワ、ワ、ワ、ワ・・・」とは「ありがとう」や「こんにちは」といった挨拶に用いる彼らの万能の言葉だという。私も思わず呟いてみた。「ワ、ワ、ワ、ワ、ワ」と。すると先の威厳に満ちたオトコが今度は「オハヨ、オハヨ、アリガト、アリガト」と呟くではないか。その男こそダニ族の長老ヤリさんで、実は以前に日本のTV番組で来日したことがあると聞いて、これまた、ビックリ。鋭く威圧的な眼光の奥に小動物のようなやさしいマナザシをしているヤリさんのことが一目で好きになった。しかし、下の方がイケマセン。まだマルトラップのコテカではなく、本物のコテカを装着なさっている。なんかヘンなモノがはみ出ている・・・。「こらあ、プロデューサー、話がちがうじゃないかあ!!」。(つづく)

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