リレーコラムについて

言の葉すくすく。

岡山真子

私は現在、日本語が通じない人と暮らしている。
1歳を過ぎてもあんまり言葉が出てこなかった私の息子である。
1歳6ヶ月の現在やっと少しずつ単語が出てくるようになり、
出始めたら1日1語の勢い。昨日は「おみみ」、今日は「ちょうちょ」。
ひとつ覚えたら、とにかく「ちょうちょちょうちょ」と連呼する。
なかでも一番のお気に入りは「バス!」
道でバスに出会うと身をくねらせて「バス!」「バス!」と大騒ぎ。
なんだかヘレンケラーが「ウォーター」と叫ぶ姿を連想させる。
そうかあ、モノに名前があるのがわかったんだね、ぼうず。
よかったね。よかったね。
私まで嬉しくなって道ばたで人目もはばからず
「バス!」「バス!」といっしょに大騒ぎしてしまう。

言葉の出てくる時期は個人差が大きいそうである。
9ヶ月という子もいれば、2歳過ぎという子もいる。
遅いように見えても「あーあー」とか「うー」とか言う
言葉が出てれば、まあ大丈夫だそうで、
とにかく反応がにぶくても、親は話しかけることが大事。
「今は言葉をためてるのよ」とお世話になってる保育士さんが言っていた。
「大人の話しはちゃんと聞いてるんだから、いっぱい話しかけてね」
しかし、うちのような核家族で帰りの遅い夫を待ちながら、子どもに独り言のように
話しかけるのってけっこうキツイ。
オバサンにはひとりごとが多くなるという宿命を今なら許せる。
テレビばっかり見て育った表情が乏しい子が増えてるそうだが、
テレビに子どものお守させちゃうこと、私もけっこうある。

「ひとりで大きくなったと思ってんじゃないわよ」と言われたことがあるが、
人はひとりでは言葉さえ覚えることはできない。
私に3歳までの記憶はまったくないが、多分私の親も、
小さなスプーンでおかゆを一口一口食べさせるように
言葉をひとつひとつ根気強く教えてくれたのだろう。
覚えていたらきっと私も親にもう少しやさしくできたと思うのに、
どうしてこんな大事なことを人は忘れちゃうんだろう、
覚えていたら親への申し訳なさで
子どもが押しつぶされちゃうからだろうか。
親をおいて先にすすめなくなるからだろうか。

今は「ママ、ママ」とトイレにまでついてくるうちのぼうず。
でもあと4〜5年で、くそばばあとか言い出すかもしれないし、
思春期には親となんか口も聞いてくれなくなるんだろうな。
まあいい。それは未来の私にまかせよう。
言葉の芽がやっとでてきた伸び盛りのぼうずに、
今の私はおいしい水をせいいっぱいあげなくちゃなのだ。
彼の言の葉がすくすく育つように。大きな言葉の木になるように。
(同じ絵本を5回も10回も読んで読んで攻撃には正直参るけど
 絵本の読み聞かせがこれまた大事なんだって。)

この週末は大好きなバスのおもちゃを買いに行ってあげようかな。

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