リレーコラムについて

「なんか飲ませろ。」

西畑幸一郎

そうですねっ。夏の虫さんのご指摘どおり「ビーチとか日焼けのシズルのない夏」
かなり偏った青春を過ごしてきました。そんな僕の、またまたプチ心霊体験談です。

その頃、浩二という友達とよくツルんでいて、毎晩といっていいほど彼の家に泊め
てもらっていました。後から知ったのですが、彼の家系はかなり霊感が強い家系
だったようです。兄弟は浩二の下に小学生の弟と、1歳チョットになる赤ちゃんの
3兄弟でした。

その夜も浩二の家に泊めてもらっていました。
僕がぐっすり眠っていると明け方3時頃に「俺の単車貸すけん、今すぐ帰って!」
と浩二にたたき起こされ、僕はわけもわからず、あまりの浩二の慌てっぷりに押し
切られる形で、しかたなく自宅へと帰りました。
次の日、単車を返そうといつものゲーセンに行ったのですが、いつも居るはずの
浩二が見当たりません。昨日の調子から心配になったので浩二の家へ行ってみ
ると、いつもと変わらない明るい浩二が出迎えてくれました。なんだか狐につまま
れた様な気分だったのですが、とりあえずゲーセンに戻ろうと言う事になり、また
いつものように遊んでいました。
すると突然、浩二が「もう家には泊まりにこん方がいい。」と話を切り出すので、
不審に思った僕は執拗にその理由を問いただすのですが、なかなか彼は理由
を教えようとはしません、それでも何度も食い下がって聞くうちに彼も根負けし、
「話を聞いてそれでも泊まれると言うのなら来てもいい。」と言うのです。この時
点で僕はかなりビビッていたのですが、もう後には引けません。ゲーセンを出て
横の駐車場で話を聞く事にしました。
彼は昨日、僕がたたき起こされる直前の出来事について語りだしました。僕らは
2階の部屋で寝ていたのですが、下から茶碗が割れるような音がしたり、冷蔵庫
を乱暴に開け閉めするような音が聞こえてきて目が覚めたというのです。父親が
酔っ払って何かを探しているのだろうと思い無視していると、足音が2階に上がっ
て来たらしいのです、父親かと思い起きてみると、そこにはまだハイハイしか出来
ないはずの赤ちゃんが立っていて、浩二を見るなり、
「のどが渇いた!なんか飲ませろ!」
と言ったらしいのです。浩二が慌てて下に母親を呼びに行き、2階へ戻ると赤ちゃ
んは僕の隣の浩二が寝ていた布団でスヤスヤと寝ていたそうです。
僕はそんな騒動の中まったく気付く事もなく熟睡していた様です。この話を打ち明
けられた時ほど自分に霊感が備わっていない事を神様に感謝した事はないでしょう。
そして次の日の朝、信仰深い浩二のお婆ちゃんに来てもらい色々と調べてもらうと
仏壇と神棚にあげてある、お茶碗に水が一滴も入って居らず、干からびた状態に
なってたとの事でした。ご先祖様の声だったんだろうと、お婆ちゃんは事も無げに
言ったそうです。もちろんこの日を境に浩二の家に泊まりに行く事はありませんで
した。ナマンダブナマンダブ。

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