リレーコラムについて

食器洗い乾燥機で、妻の心は潤うのか

丸山暁美

食洗機(=食器洗い乾燥機)がわが家にやってきて、3度目の冬がやってきた。
結婚して何年経ったか、コピーライター歴は何年なのかなんて、
いまさら数えもしないけれど、食洗機との関係は別である。
今年も、故障せず元気で過ごしてくれたなあと、キミがいてくれたおかげで
どれだけ私の心が癒されたかわからないよと、1年ごとに感謝しているのだ。

家事全般を苦手とする私ではあるが、うまいご飯を食べるのは大好き。
で、夫も料理ができなかったのでしょうがなく私が担当に。
ここまでは許せるとして、その後がいけない。食後の食器洗いである。
洗って、拭いて、棚にしまう。そのプロセスがとてつもなくめんどくさい。
そのうえ夫がTVでもお気楽に見ていようものなら、心の奥底から憎しみが
わいてくる。そこで毎晩、どちらが皿洗いをやるのが妥当か、
あるいは適しているかなど、家族会議を経て、やがて口論へと発展していた。
そんな虚しい攻防が数ヶ月続いて、私は思った。
「これはもう、金で解決するしかない!」と。そう、食洗機購入を決めたのだ。

当時の食洗機の地位はまだ、いわゆる贅沢品とされる扱いで
「その程度のこと、お前がやれば十分じゃん」とか
奥さん方が言われていた頃。お前は姑かっつーの。
うちの夫も、お決まりのセリフを繰り出してきたので、
「じゃあ何かね、あなたは3桁程度の計算なら電卓を絶対使わず、
一生暗算していく自信があるんだろうね。メールだって、電話したり
手紙を書けばすむことなんだから使わなくってもいいんだね。」から始まり、
情報収集した知識と熱意で、50以上はあるであろう切り口で
食洗機について熱く語りはじめた。
そして、その日のうちに購入反対派は、わが家にはいなくなったのである。

しかし後から聞いてみると、決め手となったのは、私が熱弁した内容でも
何でもなく、そこまで私が追いつめられていたのかという
哀れみだったようである。腹立つ。ほんとに。

とまあ、そんなプロセスを経てやってきた食洗機は、今やわが家では、
夫より上の確固たる地位を築き、私のよきパートナーとなって暮らしている。

TCC会員の(主に)既婚男性のみなさん。もし奥様が食洗機を欲していたら、
頭ごなしに反対せず、ゆっくりと胸の内を聞いてあげてください。
そしてその目が潤み、しゃべり方が熱すぎるようでしたら、かなり重症です。
すみやかに購入してください。奥様の心もきっと快方に向かうことでしょう。

わが家はこれで、ケンカが激減し、私の心にもゆとりができ、家庭も仕事も、
万事うまくいっている、ハズであるのである。

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