リレーコラムについて

犬と猫の見分け方

高橋尚睦

いいアイデアは、くやしい。

自分のすぐ近くにあったはずなのに、気づけない。
同じことを思いつくチャンスがあったはずなのに、
そのときはなぜかまったく見えない。

思いつきたいのは、そういうアイデアだ。

先日も、ひなまつりの日のとあるツイートを見て、
嫉妬してしまうアイデアに出会った。

そのツイートには、
幼い娘さんが並べた「ひな人形」の写真が載っていた。
世の多くのひな人形と違うのは、「お雛さま」と「お内裏さま」を
向かい合わせに座らせていることだ。

親御さんがその理由を聞くと

「ふたりでたのしくおしゃべりしてるの」

だそうだ。

やれらた。

「向かい合わせにするだけ」という
このシンプルさ。この灯台もと暗し感。
最小限の手数で、最大限みんなを幸せにしているではないか。
(お雛さまたち「本人」を含め)

まさに「アイデア」というものの理想形を見た気がした。

子どもはつくづく「視点」や「アイデア」の大先生だと思う。

そんな彼らに学ぶために、
子どものハッとする発言に出会ったら、
iPhoneにメモするようにしている。
今日はスマホに記録されている子ども発言録から
印象に残っていることばTOP3をご紹介したいと思う。

<第3位:ドトールにて>

カフェで店員さんが使うエスプレッソマシン。
プシューと蒸気を出した後に「ゴポゴポゴポ!」という
水を吸い上げるような音が出て男の子が一言。

「あ、げっぷした!」

コーヒーを注文するまでの待ち時間、
これまで何度もこの音を聞いてきたはずなのに、
こんなふうに考えられたことは一度もなかったなぁ。
観察眼と発想の違いを見せつけられた一言だった。

<第2位:スターバックスにて>

こちらもカフェで仕事をしていたときのこと。
銀座のお昼どきということもあり、
地下の客席はサラリーマンでごった返していた。

するとお母さんの手につながれて、
4歳、5歳くらいの男の子が入ってきた。
階段を下りながら地下に群がる大人たちを見て一言。

「ねぇ、なんでこのひとたち
  白と黒の服ばっかり着てるの〜?」

ああ、確かにそうだ。
言われてみれば、なにかの儀式のようでもある。
昔、“電磁波”を防ぐために
白装束をまとった“研究所”がニュースになっていたが、
あの子にはあんなふうに見えていたのかもしれない。

<第1位:住宅街の道端にて>

5歳くらいのお兄ちゃんと、
3歳くらいの妹が歩きながら会話している。

兄「なぁ、犬と猫の見分け方教えてやろうか?」

まずこの問いからして、
なにか光るものを感じずにはいられない。

妹ちゃんは「なになに〜?」と
目をキラッキラさせながら聞いている。
そこでお兄ちゃんがドヤ顔で一言。

兄「あのな…耳が立っているのが猫で、耳が寝ているのが犬なんだよ!」

妹「え〜そうなの〜〜? すご〜〜い!!」

新事実。
芝犬は猫だったのだ。
スコティッシュフォールドは犬だったのだ。

妹ちゃんは尊敬のまなざしで、
兄のまんざらでもない顔を見上げていた。

やはり子ども先生には逆立ちしても敵わないなと思った。

ペットを飼われているみなさん。
おうちの愛犬は、ほんとうに犬ですか?
おうちの愛猫は、ほんとうに猫ですか?
いま一度、お確かめください。

 

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