リレーコラムについて

多摩美の学生たちが書いたコピー

一倉宏

このコラムは「9年」ぶり。
「10年ひとむかし」とはいうけれど。
多摩美大で「広告コピー論」という講座を受け持って
もう「11年」になる。

最初のほうの授業で「コピー名作史」、というより
時代を映すという意味で重要と思われるコピーを
取り上げながら社会史・生活史的な話をする。
トリスの「人間らしくやりたいナ」には
どのような時代背景があったのか、とか。

「大きいことはいいことだ」
「モーレツからビューティフルへ」
「DISCOVER JAPAN」
「こんにちは土曜日くん」
「なぜ年齢をきくの」
「おいしい生活」
「24時間戦えますか」 などなど。

それらのコピーのうちのいくつかは伝承されて、
すでにことわざのような成句だと思われている。
「でっかいどお。北海道」がコピーだとは知り
ませんでしたというロコの学生が、今年もいた。

デザイナーの卵たちには体験的に感じて欲しくて、
ビジュアルにコピーをつけたり
コピーにビジュアルをつけたりという演習もする。

そして、最終課題として
「クリスマスのポスター」をつくる。
クライアントは「ルミネ」「サントリー」
「ユニセフ」の中から選んで。
もちろん、コピーも書く。

その作品は、葛西薫さん、秋山具義さん、
サントリーの重野宣伝部長、
それから、尾形真理子さんにも見てもらって。
1つ(ないし複数)選んで、
それぞれの名前をつけた「賞」としてきた。

たとえばサントリー賞では
こんな楽しいコピーがあった。

 きっと、きみは庫内 〜    
                           プレミアムモルツ  

葛西賞ほかを受賞した、ユニセフのコピー。

 サンタさん、水をください。      
           
とか。

でも、ルミネの人気がやはり高い。
「尾形真理子さんに選ばれる」というのも
モチベーションをかなりあげただろう。
圧倒的に女子学生が多いという
現代の美大事情もある。

デザイナーの卵たちが書いた
ルミネのコピーから。
 
 ポケットに入る大きさでいいわ。
 指に収まるくらいでいいわ。
 ちょうど薬指くらいの。 

 クリスマスが今年もやってきてしまうよ。 

 赤い鼻をしたあなたは、
    僕にはいちばん輝いて見える。 

 プレゼントを待ってるんじゃない。
    サンタクロースを待ってるの。

 誰かの特別になる夢を、女は信じられる。
   12ヶ月も、24時間も。 

 ことばにしないと、
    この感情は存在しないままだ。

 君 疾く疾く   我を奪ひ給え  

 絵文字の 何万倍も 大きなツリー
 絵文字の 何億倍も 温かいもの

なかなかいいでしょ。
学生って。クラスって。やっぱりいいなあ。

コロナの影響もあって、任期を1年延長していた。
大貫卓也学科長とも相談して、後任は照井くんに。
照井くん、よろしくね。大変だけど、いいもんだよ。


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