リレーコラムについて

俳句はかっこいい

原麻理子

こんにちは。
今週リレーコラムを担当している、
TCCの新入会員で大学院生の原麻理子です。
(大学院については、コラムの1回目をご覧ください)
コラム2回目の今日は、私の趣味であり、
私の大学院での研究テーマでもある俳句について書きます。

俳句、というと、
あまりなじみがないものに思える方もいるかもしれませんが、
短歌や俳句などの短詩型と、
短い言葉でぐっと人の心を掴むコピーには、
近い部分もあるんです。

たとえば、有名な歌人(短歌を書く人)に、
枡野浩一さんという、以前コピーライターだった人がいます。
『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである』
という、短歌をそのままタイトルに冠した全短歌集が、最近出版されました。
私は俳句を始める以前は短歌をやっていたのですが、
「コピーライター」という職種を初めて意識したのは、
枡野さんの経歴を知ったときだったと思います。
それから、こちらも最近「情熱大陸」に出演された歌人の木下龍也さんは、
コピーライター養成講座の谷山雅計クラスに通っていたことで有名です。
そのほか若手歌人の中にも、実はコピーライターです、という人がちらほら。

それに比べると、俳句を書くコピーライターは少ないような気がします。
そんな中、コピー好きな方に声を大にして伝えたいお名前は、
コピーライターの土屋耕一さん。
土屋さんは、「柚子湯」という俳号(俳句を書くときの名前)もお持ちだったとか。
キッコーマンのシリーズ広告で、
「白菜はまるいお尻を見せて積む」
「表札はなんと書くのか落花生」
など、野菜を読み込んだ俳句がコピーになっているものもあります。
(私は土屋さんのコピーが本当に大好きです)
コピーライターではありませんが、安西水丸さんも俳句を書かれていました。
『水丸さんのゴーシチゴ』という、俳句&イラスト集があります。

さて、ここまで読んでくださって、
そもそも、短歌と俳句の違いって……?
と思っている方も少なくないと思うので、ごく簡単に説明します。
季語があって、575で終わりなのが俳句、
季語はなくてよくて、57577なのが短歌です。

私の大好きな俳句をいくつか挙げてみます。

ピーマン切って中を明るくしてあげた 池田澄子
また美術館行かうまた蝶と蝶 佐藤文香
お祈りをしたですホットウイスキー 佐藤智子

……どうですか、思ったより読みやすいし、なかなかよくないですか?

ただ、俳句は短歌より短い分、
言葉をぎゅっと圧縮しているようなところもあって、
読むのに少し解凍の技術を要する部分もあります。

たとえば、先ほどの「また美術館行かうまた蝶と蝶」という俳句は、
「また美術館行こう」と互いに言い合っている人たちがいて、
その近くを蝶が二匹飛んでいる、と読むことができます。
でも、「蝶と蝶」の解釈にはもう少し幅があって、
「また美術館行こう」という会話をしている二人が「蝶と蝶」のようだ、
と読むことも(なんとなく若い女性同士みたいですね)、
「また美術館行こう」という会話を実際に「蝶と蝶」がしている、と、
少しファンタジックに読むこともできます。
真ん中に挟まった二回目の「また」は、
「また美術館行こう、また」と念を押す意味での「また」とも、
「また美術館行こう」と言ったあと、「またね」と別れるときの「また」とも、
蝶がまた飛んできた、と読むこともできます。

こうした読みを全部ひっくるめたものとして、
「また美術館行かうまた蝶と蝶」という俳句があるんだと思っていて、
こんなふうに、自分でいろいろに解凍して読めるようになると、
俳句はすごくすごくおもしろいです。

つい熱くなって、長くなりました。
このコラムを読んで俳句に興味を持ってくださった方には、
私が俳句を始めたきっかけの入門書『俳句を遊べ!』と、
若手俳人の俳句が読める『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』
をおすすめしておきます。

なんだか俳句の回し者みたいですが、
広告人の端くれとして、
自分がいいと思う商品のいいところが
世の中にちゃんと伝わっていない、と思うと
広告したくなる、という感じで、
みんなが「俳句ってかっこいいよね」と当たり前に言うようになる日まで、
私は「俳句はかっこいい」と言い続けたいのです。

最後に、私の俳句を一つだけ紹介して終わりにします。

かかと踏んでジャージで桜満開で 原麻理子

次回は、言葉に関する私のもう一つの趣味である、
韓国語について書こうと思います。

コラムへのご感想や、俳句についてもっと知りたい!という方、
俳句を書いてほしいというご依頼(ぜひ!)などなどは、下記まで。

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(私の俳句20句がここから読めます)
(もっと読みたいという方がいたら、100句もここから読めます)

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