リレーコラムについて

コピーが売れた日

服部隆幸

大学生1年生のころ、

ヴィレッジヴァンガードという

雑貨屋のような本屋でバイトをしていた。

 

店員が書くPOPが名物で、

どの店舗もだいたい大喜利状態になっている。

 

書き方の指導をされた覚えも、

そのPOPは貼っちゃダメ!と言われた覚えもほとんどない。

もちろんCDもいない。

書きたい放題で、滑りたい放題。

青と黒の太ポスカで

どうしようもないことばっかり書いていたと思う。

 

「服部くん、ここ好きに使っていいからパンツの売り場作ってくれる?」

ある日、店長から男性用下着コーナーの棚作りを任された。

 

結果、売り場の一番上にあるPOPに書いたコンセプトは、

「毎日が勝負。」

ズラッと並んだパンツには、それぞれのデザインに合わせて

「デート用」 「プレゼント用」 「出張用」 「雨の日用」

など好き勝手に書いた。

我ながら、ちょっといいんちゃうか、と思っていた。

 

数日後、ひとりの女性がパンツを持ってレジにやってきた。

 

「これラッピングして欲しいんですけど」

「わかりました」

「あ、この貼ってるPOPも一緒に入れてもらっていいですか?」

 

思い返せば、

あれがはじめてコピーで

人の心を動かすことができた瞬間だったかもしれない。

コピーライターという職業のことはまだ知らなかったが、

間違いなく原体験のひとつだ。

そのコピーください。と言われたことが

とにかく嬉しくてしょうがなかった。

ちなみにそのPOPには、

「初夜用」と書いてあった。

 

そんなエピソードをひっさげて、

「コピーライターになりたいんです!!」

と面談で主張し続けていたら

最初の配属が営業で絶望するのですが、

それはまた、別の話。

 

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