リレーコラムについて

アイデアのパッキング術

上島史朗

同僚に『ジョジョの奇妙な冒険』を愛する女性のコピーライターがいます。

僕とおなじTCC会員の山際良子さんです。

 

山際さんに、

「ねえ、山際さん。ジョジョのどのあたりが面白いの?」
と聞いてみたら、
「上島さん、ジョジョのどのあたりが面白くないと思っているのですか?」
と返ってきました。
質問に質問で返すという禁断の手口。

その後、ジョジョの魅力を圧倒的な情報量と熱量で語ってくれました。

 

影響を受けやすい僕は、GWに第4部から読み直してみました。
(正確に言うと、Netflixでアニメが見れたので、見直してみました。)
仗助も、ジョルノも、ジョリーンも、ううう、やっぱり面白い・・。

途中で挫折した記憶のまま止まっていた僕の時間が動き始めました。

 

これは非常にどうでもいい話ですが、
朝、白いTシャツに着替えていたときのこと。
着替えたら前後ろ逆に着てしまったらしく、
あ、いけないと思い一度脱いで、もう一度着ました。
しかし、なぜか今回も前後ろ逆です。
なぜだ?おかしい。その時、フと思いました。
「これは…スタンド攻撃を仕掛けられているんじゃなかろうか…。
 何度着替えても裏表逆に着てしまう謎のスタンドに…」
感化されやすい僕の、非常にどうでもいい朝の出来事です。

優れた物語は、日常に侵食してくる気がします。

 

「好き」という熱量は、伝染しやすい。

 

そのことを体現されている人がもう一人いらっしゃいます。
僕が尊敬する造形作家の、森井ユカさんです。
粘土を使った造形作家として大活躍しながら、
世界各国を旅する中でスーパーマーケットや郵便局で見る
日用雑貨や食品のパッケージデザインに魅了されて、次々と書籍化。
さらに、旅先で通ったIKEAを愛するあまり、
ファン視点で見たIKEAの本を既に2冊まとめられています。
台湾が好きになれば、台湾と東京の2拠点で半々暮らしをするし、
一体、いくつの「好き」があるのだろうと、

会うたびに驚かされ、僕もたくさん影響を受けています。

 

そんなユカさん、海外旅行についての本を数冊書いています。
僕が好きで参考にしているのは、
『よくばり個人旅行!旅立つまでのガイドブック』

という本の中で紹介されている森井ユカ流・パッキング術。

 

旅行のパッキングって、ついギリギリになってしまうことがありませんか?
それをユカさんは、
3日前くらいから居間にスーツケースを広げておいて、
通りすがりに持っていくものを放り込むそうです。
こうすれば、あとでいらないものだけ取り除けばいい。
これ、実践してみるとわかりますが、旅行の忘れ物が減り、

最後の整理で本当に必要なものが吟味されて効率的なのでオススメです。

 

僕は、アイデアにも同じことが言えるよなあと、

いつも、パッキングしながら思います。

 

いろいろな仕事の相談がきた時、
その仕事の目的地(ゴール)に向けて、
頭の中に、またはMacのフォルダの中に、スーツケースを広げます。
そこに、アイデアの断片や、ヒントになりそうなことを
それこそ通りすがりに放り込むのです。
「これ、直接は関係なさそうな情報だけど、僕は好きだ」
「アイデアとしてはまだ弱い。でも、嫌いになれない」
長旅を共にするのですから、情報も、アイデアも、
自分が好きで仕方ないものが自然と集まります。
そうやって、スーツケースにポイポイと
情報やアイデアの断片を放り込んでゆきます。
最初から厳選しなくていいから、とにかく「好き」をスーツケースへ。

そう思うだけで、心理的な負担はずいぶん減ります。

 

やがてスーツケースがパンパンになる頃、目的地への旅程が見えてきます。
見えなければ、まだ準備(好き)が足りないから、パッキングを続けます。
複数の仕事が重なる時は、スーツケースが増えるイメージです。
スケジュールがあまりにも短い仕事の時は、
スーツケースも日帰り用の小型のものになるかもしれません。
時間がダラダラあってもうまくいきません。
大きすぎるスーツケースは、旅に出るフットワークが重くなるから。
まずは3日間ぐらいで、自分が集めていた情報やアイデアのかけらを、

ひたすらパッキングしていくのが良い気がします。

 

最後に、パッキングする際に整理します。
本当にこれ必要だろうかと。
不要なものは置いていきますし、
意外と役立つ使い方が見えることもあります。
本当はずっとパッキングだけやっていたい時もありますが、
それだとどこにも行けません。
僕の、チームの、その時できる最善のパッキング、
つまり、信じられる「好き」を集めて、
僕らの仕事は、目的地へと旅立ちます。
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