リレーコラムについて

…そのコピー、僕ですね。

吉田洋晃

コピーライターやCMプランナーが集まって
お酒を飲むときまって
「あの広告は駄目だ。」「あのコピーは良くない。」
といった具合に現行の広告物の即席批評会が開かれることは、
この仕事をしている誰もが
経験したことがあることではないでしょうか。

では、果たしてみなさまには
経験ありますでしょうか?
俎上に載せられた「あの広告は駄目だ」の
“あの広告”が自分が担当したものだったことが。

私は、あります。
しかも、大御所のコピーライターの方に。

福岡にスゴロクモーターズというバーがあります。
通称、スゴロク。
そこは、いわば広告関係者のたまり場のような場所でした。

その日も、スゴロクにはご多分に漏れず何人かの広告関係者。
たまたま、その日が福岡広告協会賞の授賞式の直後だったとこもあり、
受賞した広告の話になりました。
電通の大先輩でもある大御所のコピーライターが口火を切りました。

「色々今回の受賞作みたけどさ、あの広告は良くなかった。ダメだな。」
「どれですか?」
「あの、〇〇ってやつ。」
「あーあれですね。
あれは‥
僕が書いたやつですね…。」

スゴロクに静寂が訪れました。
換気扇が「ヴォン!ヴォン!ヴォン!」とご機嫌に回る音と
蛇口から滴る水滴がシンクを打つ音だけが、
6畳半くらいの店内にこだましていました。

後世に残るような広告を数多く作り、
本も出版されている、
そんな広告の大先輩。言葉のプロ。
この気まずい瞬間を打開する一言に、店内の注目が集まります。

「まぁ…あれだな、うん。」
刹那の中で、絞り出された一言。
そこで会話は次の話題に移りました。

グロテスクな時間でした。
良い広告を作るために精進しようと誓いを新たにした瞬間でした。
去年の秋の出来事です。

申し遅れましたが、新年一発目のリレーコラムを担当させて頂きます
電通CMプランナーの吉田洋晃と申します。
そして、2023年1月から3年間出向していた電通九州から帰任しました。
どうぞ宜しくお願い致します。

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