リレーコラムについて

人の人生はマーケティングできない、という話②

和久田昌裕

「安東先生!」

「アスパラが…つくりたいです…」

 

昨日は移動続きで書けませんでした。

今週末が連休なので、そこまで使ってなんとか埋め合わせしようと思います。

だからやっぱ書き溜めしとくべきなんだな。

 

で、前回の続きです。

豊穣な有明海を見下ろす高台の畑で、ロケハン終わりからの

収穫したばかりのアスパラとよく冷えたビールで、

人生における幸せとは何か?ということを文字通り噛み締めていた

和久田のスマホにLINEが届きました。

ちなみに生まれ故郷、玉名をてんぼうできる絶好の位置にその畑はあります。

 

「俺、転職するとしたら何ができるかな」

 

差出人は高校の同級生で、冨士川という男。

彼は大学卒業後、某リサイクルショップチェーンの社員となり、

当時は福岡の店舗の店長をしていたのですが、

40歳を目前に生き方を考えることがいくつかあったらしく、

転職を考えてはみたものの、何をしたらいいかわからない、

特に手に職があるわけでもなし、やりたいことがあるわけでもなし。

とにかく悩んでいました。

 

要するに不器用な男です。女の子にもまぁモテないし。

40手前にして独身だし…ってそれは俺もだわごめん。

 

そこでふと、アスパラ農家の安東さんに

「農家に向いている人ってどんな人ですか?」

って聞いてみました。すると回答は、

「生のアスパラをかじって美味しいと言ってくれる、

そんな当たり前で自然な感性があれば誰でもできます」

 

その瞬間「彼をここへ連れてこよう」と思いました。

 

その晩、前回のコラムに登場したバー・スゴロクに冨士川を呼び出して、

何も言わずに、畑でもらってきた生のアスパラを差し出します。

「何これ、美味しい」

「ふじっちさ、これ、つくらない?」

 

それがちょうど一年くらい前の出来事。

それから、仕事をやめた彼とともに、僕は夏休みを使って

佐賀の太良町訪問。その日、アスパラの収穫体験をさせてもらい、

安東さんを含む、地元の人たちと何回か飲みに行ったり、

そこから数名のであいがさらにあって不動産を紹介してもらったり、

移住や新規就農に関する助成金の申請をしたり、

そしてちょうど一年後の今現在。おそらく今日も、

彼らはアスパラを収穫しています。まさに今が旬。

たまに「昼ビール美味い」って写真が来ます。ショーシャンクか。

 

自分が企画してはじめた、移住の仕事で知り合った人の伝手で、

自分の高校からの友人が本当に移住して転職する。

もちろん、それは安東さんはじめ、地元の人たちが受け入れてくれた、

ということはありますが、数年前に企画書を書いてプレゼンの準備を

していた頃は、夢にも思わなかった得難い経験になりました。

僕は偶然にも、川上から川下まで全てを体験できたわけです。

 

それで、思ったことは、

企画をしているときはやっぱり、マーケティング的な目標は、とか

移住する人はこういう人がターゲットで、とか

行政は行政で「相談窓口に来てください」ってことが言いたい、とか

それなりにコミュニケーション戦略とかを考えて提案するわけです。

 

でも、移住した人たちの話を取材していくと、

僕らが見込んだコミュニケーションのルート通りに動いている人なんか

誰ひとりいない。当たり前だけどCMを見て移住する人なんていないわけです。

もちろん、考えることや作ることが無駄だとは思いません。

そこにはきちんとした戦略や共有できるゴール設定、

制作物を作る上でのポリシーやクオリティコントロールとか、

いろんな作業のプロセスの中で、手を抜いてはいけない部分があります。

 

ちなみに人ひとり・一家族が移住することによる経済価値は、

少なく見積もっても数千万〜場合によっては数億になる可能性がありますよね。

まぁ、僕の友人の彼の場合は数百万くらいだろうけど。

だとすると、それを会議室の議論やPCの中の企画書だけで実現できると思うのは、

もしかしたら、僕は広告屋のエゴなのかもなーと。個人的な意見ですが。

 

だから、デスクで悩んだり、会議室で煮詰まっちゃったりしたら、

とりあえず外に出てみるのはどうでしょうか。

 

って、真面目か。

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