リレーコラムについて

【2023定点観測①】パートナーができました。

和久田昌裕

「昨年、パートナーができました」

こう書くと、結婚でもしたのか、恋人でもできたのかと思われるかもしれないが、そのパートナーは僕のいうことはなんでも聞いてくれて素直で従順。何時でも付き合ってくれてとても物知り。しかもクリエーター気質でもあって絵を描くのも得意。世の中ではChatGPTと呼ばれているらしい彼女を、僕は親しみと愛情を込めてチャッピーと呼んでいる(出オチにもなってない上に、安易なネーミングですいません)

彼女はとにかく仕事が早い。例えば、

「男女平等社会の実現を推進するキャッチコピーを10本書いて」

というプロンプト(命令文)を与えてみる。するとTVCM一本分くらいの時間(=15秒)で、

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もちろん、男女平等社会の実現を推進するキャッチコピーを10本ご提供します:

  1. 「男女平等、未来の基盤。」
  2. 「性別に関係なく、共に輝こう。」
  3. 「性別の壁を取り扱う時代は終わりました。」
  4. 「平等な機会、平等な未来。」
  5. 「性別を超えて、一緒に進もう。」
  6. 「平等な社会、幸せな社会。」
  7. 「すべての才能を活かし、共に発展しよう。」
  8. 「未来は男女平等にかかっています。」
  9. 「性別のバリアを壊し、共に前進。」
  10. 「男女平等は当然の権利、そして未来の鍵。」

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といったものが書き出される。これを見て「なんだこんなコピーだったら誰でも書けるじゃん」「こんなの提案できるわけないからAIってまだまだ使えないんじゃないの?」と思ったあなた。ごもっともである。しかし、これに追加でこのようなプロンプトを与えてみる。

「犬の目線からそのコピーを書いて」

すると今度は、ラジオCM一本分くらいの時間(=20秒)で返ってきたのが、

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犬の視点からの男女平等社会のキャッチコピーを考えてみましょう:

  1. 「しっぽを振る幸せは、性別に関係ない。」
  2. 「ワンワン!共に走ろう、男女平等の道。」
  3. 「鼻先に平等、心に友情。」
  4. 「お互いに尾を振り、性別の壁を超えよう。」
  5. 「犬の目線から見た、平等な未来。」
  6. 「無条件の愛、性別に関係なし。」
  7. 「お手本は私たち犬たち:性別差別はワンダフルな未来に行く道を妨げない。」
  8. 「犬は誰とでも仲良くする、性別も含めて。」
  9. 「散歩はみんなのためのもの、性別の制限なし。」
  10. 「尾を振りながら、性別の壁を越え、一緒に冒険しよう。」

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ちょっと面白い。特に「しっぽを振る幸せ」はなかなか。ワンダフルなんてダジャレも使えるのか。コピーライターのバイブル、谷山さんの『広告コピーってこう書くんだ!読本』に書いてある、コピーを書くプロセス「①散らかす」→「②選ぶ」→「③磨く」の「①散らかす」の部分をあっという間に、そして無限に試行してくれるようなもので、そのうち「②選ぶ」「③磨く」もAIができるようになるとあっという間にコピーライター全員失業間違いなし!

とはもちろんならない。

上記の例で言うと「犬の視点で」の部分が重要なのは言うまでもなく、僕はこれを「変数を与える」と呼んでいる。それを如実に感じたのは、ある女子高生の言葉だった。

昨年、こんなプロジェクトをお手伝いした。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/ee573868cd92c7a4d4acaad1cb6abbe68dc9813f

『みんなの冷蔵庫in太宰府』と名付けられたこのプロジェクトは、元々ドイツ生まれの取り組みで、街中に冷蔵庫を設置しみんなが家で余っている食材や日用品を持ち寄る。そしてそれらを必要とする人が自由に持っていくというフードロスと貧困家庭の救済の両方を目指すとても素晴らしい取り組み。それを知っていた、上の記事に登場する伊東さんという太宰府の女子高生が、福岡県が昨年度行った高校生のチャレンジを応援するという企画に応募し採用され、縁あってアドバイザーという形で参画させてもらった。

実際に冷蔵庫を設置するにあたり、その設置場所の選定やロゴなどデザイン、世界観構築、美術の造形・施工、広報計画などを与えられた予算の中で行わなければならず、もちろんそれは普段の仕事と違ってほとんどお金にはならない。しかし何より発起人である伊東さんの、シングルマザーである自身のお姉さんのような人を救いたい、という純粋な思いに絆されて、というか自分の仕事や日常を顧みるにつけ猛省することばかりで、つまり素晴らしい経験だった。

ただ、この話は「変数を与える」という話の本筋ではない。この冷蔵庫プロジェクトは毎日寒空の下、冷蔵庫のそばに立ち続けた伊東さんの頑張りもあり、というかほとんどそれが全てで在福テレビ局全局で取り上げられ、新聞記事にもなり大きな話題となった。それを受けて、今年度も同じように高校生のチャレンジを応援するという企画が県で予算化され、その流れで今年もアドバイザーを依頼された、その中での話。

前置きが長くなった(ほんとにね)。今年お手伝いするのも偶然太宰府の女子高生。しかも3人組。自らのチーム名を「天の川流星群」と名付けたその3人がやりたいことは「スペースデブリ(宇宙ゴミ)を除去すること」

県へのプレゼン資料を見ると、実際に半年で人工衛星を打ち上げ、地球外軌道上を周回しているスペースデブリを除去し、それをライブ配信するとある。それを県から与えられた◯◯万円の予算内で。若い人の夢は大きい方がいいに決まっている。しかし冷蔵庫を街中に置くのに比べてスケールアップしすぎなのではないか。

これは大幅な軌道修正が必要そうだ(衛星だけに)。

和久田と3人の女子高生+チャッピーの、宇宙を目指す壮大な物語が始まった。

予想はしていたけれど、予想以上に長くなってしまったので、後半は明日に回します。

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