リレーコラムについて

万年筆のとびら1

薄景子

先週の金曜日、クラブハウスの
「朝倉勇さんを囲む夕べ」に参加しました。
目の前で語られる大巨匠のドラマチックなお話、
とても聞きごたえがありました。

朝倉さんに初めてお会いしたのは、
昨年度のTCCホール・オブ・フェイムの顕彰式。
遅刻して会場に入ると、ちょうど壇上で
朝倉さんが受賞のコメントをされていました。

8年間、結核で療養生活されていたこと。
外とのコミュニケーション手段は手紙だったこと。
その手紙がきっかけでコピーライターになられたこと。
そして、コピーは手紙だと思って書かれていること。

どの言葉も、ぎゅんぎゅん入ってきました。
パーティー会場でお見かけした朝倉さんに、
「素敵なコメントありがとうございました」と
お伝えすると、朝倉さんはおっしゃいました。

コピーは手紙ですよ。
手紙は万年筆で書いた方がいい。
万年筆は、筆がとまればインクがしみこみ、
しみこんだ紙に思いがでますから。

また素敵なことを聞いてしまいました。
では朝倉さんに手紙を書きます! と、
とっさに宣言してしまったのですが、
家に帰ってハッとしました。
私は万年筆を持っていなかったのです。

初めての万年筆、どれを買ったらいいのか
さっぱりわからず。
とりいそぎ、履歴書用の1000円の万年筆を買って
手紙を書くと、しばらくして
朝倉さんからお返事が届きました。

「万年筆は長年書きつづけていくと
 自分の手の一部になるようです。
 だから、たくさん手紙をお書きなさい。
 ご両親、お友だち、未知の方へ。
 それがあなたの人生を広げるでしょう」

太いペン先のじんわりにじんだその文字は、
朝倉さんがまるで話しているかのようでした。
それを見たら、一生モノの万年筆が
どうしようもなく欲しくなり。
私の万年筆さがしのとびらが開きました。

長くなりそうなので、続きはまた明日。

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