リレーコラムについて

長く続く会社が多い国は、 いい国だと思う。

中里智史

東急エージェンシーが赤坂にあった時代。

僕らが働いていた赤坂のオフィスから徒歩圏内に岩崎俊一さんの事務所があった。

クリエイティブに異動して3年目とかそれくらいだったと思う。

僕は岩崎さんが外部CDとして参加する競合コンペにアサインされた。

 

当時、東急エージェンシーが大きめの競合コンペに参加する時、

外部CDをアサインすることが少なくなかった。

僕にとっては、初めて東急エージェンシー以外のCDと仕事をする機会。

超一流のCD、コピーライターの方に自分の企画を見せる。

高揚感と緊張感、承認欲求や責任感など色々な感情がないまぜになり、

岩崎さんの事務所に行く前に会社のトイレでえづいた。

 

アサインされた社内スタッフの中では30歳の僕が一番若手だった。

であるならせめて量だけはとA4縦書きのWordに字コンテを色々書いて岩崎さんの前に出した。

岩崎さんが僕の企画に、どんな反応をしたのかハッキリと覚えていない。

それくらい僕は緊張していたし、僕にとっては非日常の世界だったのだ。

その後数回の打ち合わせを重ねたのち行った競合コンペは見事勝利して、実施することになった。

その時の仕事のコピーがタイトルにある

 

長く続く会社が多い国は、

いい国だと思う。

 

岩崎さんがA4横書きにプリントされたこのコピーを机に置いたとき、

答えを見せつけられたと思った。

ぐうの音も出ないっていう経験を初めてした。

ちなみに、岩崎さんが打ち合わせで出すコピーは世に出さないのが勿体無いと思うものばかりで、

一緒にいた先輩は、「岩崎さんと同じフォントなら、私のコピーもよく見える気がする」

なんて失礼なことを言っていた。

かくいう僕もそのフォントや改行の仕方にまで憧れてしまった。

 

実際の制作作業は岩崎さんの目指すクオリティについていくのがやっとで、

例えば、CMのナレーション原稿を書く時も、

岩崎さんとの打ち合わせから出てくる金言を会社に持ち帰り、

CMコンテにしようとすると15秒に収まらないのだ。

僕が岩崎さんの言葉を取捨選択するなんて恐れ多い。

15秒ナレーション原稿を夜中の2時、3時までウンウンうなりながら考えていた。

いざ、ナレーション原稿を岩崎さんに送る時もまたしっかりとえづいてしまったことが忘れられない。

 

僕にとって岩崎さんと実施までご一緒できた仕事はこれが最初で最後です。

この時の経験が僕の広告制作者としての背中にしっかりとした背骨を入れてくれた。

そう思います。

この案件にCDとして入っていたTCC会員の西尾ヒロユキさんは、酔っ払うとよくこのエピソードを話します。

西尾さん経由で、岩崎さんに褒められている感じがしてその度にしっかりしないとと背筋を正される思いです。

岩崎さんをよく知る方が多いTCCのリレーコラムで、岩崎さんとの思い出を自分が書いて良いのかなという思いはありましたが、バトンを回してくれた都竹さんからのリクエストテーマにもあり、改めて岩崎さんと一緒に仕事ができた感謝を残せたらと思い僭越ながら書かせていただきました。

失礼な表現とかありましたら、申し訳ありません。

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