リレーコラムについて

フランス日記 (4)

長谷川宏

フランス日記 (4)

サリュー、サヴァ?
某月某日。チュイルリー公園の塀にコピーでつくったようなA4のポスターが張ってあった。フィリップ・ドゥクフレの公演ではないか。さっそくFNACでチケットを購入する。
フィリップ・ドゥクフレは振付家、演出家。アルベールビル冬季オリンピックの開会式の演出で一躍有名になった。ヌーボー・シルクの1種なんだろうけど、それよりもう少しダンスの要素が強いかな。
今夜の出し物は、「トリトン2」。日が落ちて公園の樹々が黒くなる頃、会場に向かう。案内板など出ていないので、人の流れにくっついていく。樹々の間から、松明が見える。それに沿っていくと、特設会場があった。森の中に人知れずひっそりと存在する秘密の場所のよう。このあたりからもう違う世界へ入っていく。
客席は鉄骨で組んだ野球場の外野席のような段々状。屋根はない。上を見るともう夜空だ。まわりはこんもりとした植物群。虫の声がかすかに聞こえるが、テープかもしれない。全席自由席で、最前列に座ることができた。ステージには音楽を演奏するコナーの他に、演者が化粧を直したりする楽屋も作られていて、すべてが客席から見える仕組み。
観客にキャンディーを配っていた男がステージに上がり、「はじめます」と口上を述べてはじまった。
…………………………………………………………………………………
すべてが終わって拍手が鳴り止まない。会場を出ると、真っ暗なパリの夜に、ライトアップされた大観覧車とエッフェル塔が白く輝いていた。
翌日、コンコルドが墜落した。

NO
年月日
名前
5815 2024.12.06 山田大輝 ジェノベーゼ
5814 2024.12.05 山田大輝 センサー
5813 2024.12.04 山田大輝 嬉野
5812 2024.12.03 山田大輝 祖父の葬儀
5811 2024.12.02 山田大輝 なおたろう
  • 年  月から   年  月まで