リレーコラムについて

Jiro

岩永嘉弘

「Jiro、今まで黙っていて悪かった。隠していたわけじゃないし、おまえもそろそろ、うすうす感づいていたかとも思うんだけれど、実はね、おまえのほんとうのお父さんは、私じゃないんだよ」
時々、私は事務所のデスクの下の足元に寝そべっているJiro(黒のラブラドール4歳半)に話しかけてみる。いつも反応はなくキョトンとしているのだが。
このセリフは僕のオリジナルではない。ドッグフードの広告にのった投書(たしか四国の人からだった)の真似である。なんて癒される会話だろう。毎日のように僕は真似をしてJiroに囁いている。
しかしJiroは、そんな複雑な日本語より、次の一言の方が聞き分けられるし、複雑な血縁関係なんかより、もうんと関心がある。
「サンポ」
この単語には、ピクッと耳をそばだてる。立ち上がる。
「Jiro、そろそろお父さんをサンポにつれていってくれる時間だよ」
(当然彼が僕をサンポさせて呉れているのだ)
Jiroはもう、ドアの前まで行って座っている。

岩永嘉弘の過去のコラム一覧

0605 2002.02.17 ティップネスとワンダフン
0604 2002.02.17 明日があるさ
0603 2002.02.15 本の宣伝
0602 2002.02.14 touring
0601 2002.02.13 Jiro
NO
年月日
名前
6005 2025.11.26 安達岳 つくっている人の前で、つくっている人だよ。って言えるようになりたい。
6004 2025.11.25 安達岳 大きな声
6003 2025.11.21 水野百合江 趣味が高じて
6002 2025.11.20 水野百合江 いや、めっちゃわかる
6001 2025.11.19 水野百合江 おすわり、待て
  • 年  月から   年  月まで