リレーコラムについて

毛もくじゃらの愛。

丸原孝紀

朝起きたら、佐久間が寝ていた。そんなことがあっても、うちの家族は怒りません。驚きはしますが、まあ、仕方ないなあ、佐久間だから。そんな感じです。

その夜も二人で、ウチに泊まればいいから終電気にせず飲もう、と近所で酔っ払っておりました。お互いグジャグジャになってきた夜更けに、佐久間くんはとろんとした目つきでつぶやきました。「まるちゃん、犬は…犬は…、こうたほうがええぞぉ」

犬と育った佐久間くんは、犬が好き過ぎて犬のような性格になってしまっているような人間です。ああ、この人は本当に犬が好きなのだなあ。そのときはその程度に受け止め、「へぇ」と聞き流し、その言葉はビールと一緒に流し込んでしばらく忘れていました。

それから数年後、思いがけず犬を飼うことに。知り合いのお母さんが足を悪くして、大型犬を飼えなくなって困っていました。このままだと犬の里親団体に預けないといけない、しかし体も大きく、もう6歳だから引き取り手はないだろう、という話でした。そりゃあかわいそうだ、うちでよければ引き取るよ、ということで、その子を家族として迎えることになったのです。

散歩が大変なんじゃないだろうか。なついてくれるだろうか。いろいろ不安はありましたが、毛もくじゃらのおっきい犬が家にきたとき、その愛らしさに不安は一気に吹き飛んでしまいました。うちに来てすぐの頃はこちらを試すようないたずらをしたりはしたものの、ほどなくしてすっかりうちの子に。

あれから4年あまり、ともに暮らしていますが、まあ、犬、いいものです。かわいいとか、かしこいとか通り越して、いい奴なんです。ぬくもりのあるモフモフで心をあたためてくれる。トボけた表情で笑わせてくれる。まっすぐ、今を味わう幸せを見せてくれる。

何よりいいなあと思うのは、愛とか慈しみといった、人間が崇高な心の営みだと思っていることを、当たり前のように自然に、惜しみなく出しまくるところです。毎朝、顔を合わせるたびに尻尾をブルンブルンと喜んだり、ケンカを止めに入ったり、病気の家族がいれば心配そうに寄り添ったり…。

あと、散歩をしているときに、怖そうなオッサンや、神経質そうなおばあさんなんかが犬を見てうれしそうに話してきたりすると、人間の隠れた善なる部分に触れたような気がしてうれしくなります。

一日のほとんどを間抜けな顔でゴロゴロしているだけなのですが、ただ、生きているだけで大切なことを教えてくれる、実にありがたい存在です。

いつか私も、酔っ払って言ってしまいそうです。「なあ、犬は…犬は…こうたほうがええぞぉ」

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