リレーコラムについて

映画術

高崎卓馬

映画について書かれた本が好きだ。
最近だと
塩田明彦さんの「映画術」という本がとても面白かった。
動線という考え方で
映像を分解していくというのは
目から鱗だった。
溝口健二の西鶴一代女にはそんな美しい仕掛けがあったのか。
成瀬巳喜男の乱れるにはそんな見事な演出があったのか。
なるほど。
今の映画が何を失ったのかがよくわかる。
僕たちは映像を見ながら
表面にあるもの以上の何かを確実に受け取っている。
天才たちはそれをコントロールする術を持っていたのだ。
最近観たスリービルボードという傑作も
登場人物たちは実はそれぞれのテーマ曲をもっていた。
そしてそれは彼らの宿命を感じさせるものだった。
見事な仕掛けだった。
ヒッチコックのサイコの話も面白い。
なぜ完全コピーされたリメイクは
まったくカット割りまで同じなのに
オリジナルを超えられなかったのか。
映画監督の深い思考に触れて
映画がますます好きになった。

僕たちはそういうものを
つくる世界で生きている。
その幸せをまた感じた。

さて来週は
愛すべき後輩の魚返洋平くんです。
彼とは長いつきあいですが
一番最初に会ったときから
長い文章に才能を感じたひとでした。
お楽しみに。

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