リレーコラムについて

一緒に旅するから別れるのだ。

花岡邦彦

私は2年前にフリーランスになった。

独立する前のサラリーマン時代、
ヒマを見つけては鉄道に乗っていた。

今も乗っているが、
会社員のときのほうが、けっこう乗っていた。

その結果「JR全線完乗」を8年前に達成した。

そう「乗り鉄」です。

わかりやすく言えば、北は北海道の稚内から、
南は九州枕崎まで、JRの全部の線に乗ったわけです。

小学校5年から始めたこの趣味。
いい齢をしての快挙!だから、
この話をすると、そこそこ反響があった。

みんな、すごい!と言ってくれる。

そのこと自体は、うれしいわけですが、
必ずその後に質問される。

それはそうだと思う。
趣味の内容が、よく理解できないわけだ。

例えば、こんな質問。

「忙しいコピーライターの仕事をやっていて、
よくそんな時間がありましたね」

これなんかは、まだいいほうだ。
当然、疑問を抱くだろう。

広告業界は、とにかく忙しいと聞く。
徹夜もちょこちょこあるらしい。

月曜のプレゼン準備で土日も出勤。
平日など休みなどとんでもない。
有給はたまるばかりだ。

今は、はたらき方改革とかで、
有給を取れ取れ!の時代だろうが。

僕が鉄道に乗りまくっていた頃は、
有給?は?なにそれ?みたいな時代だったから、
数日仕事を休むなんて無理でしょ、と思われる。

でも、ヒマというか、好きな時間というものは、
忙しさとは関係ないと私は思っている。

強い気持ち、どうしても、それがしたい!
願望が強烈にあれば、時間は向こうからやってくる。

ゴルフ好きな人は、ヒマだらけの人なわけじゃない。
むしろ、超売れっ子のプロデューサーの人ほど、
ゴルフに行っている。

釣りもそうだ。
釣りのためなら寝なくても
夜明け前の出発のために編集室から直行する。

酒飲みも、そうだ。
そんなに忙しいなら早く帰ればいいのに
と思われても、関係ない。

ディープな仕事の後ほど、ハシゴ酒だ。
その人は、会社で窓際でいるわけではない。

「鉄道の旅」だけ別ものみたいに扱うのはへんだろう。

「どの線が、いちばん景色がいいですか」

これも、なかなかこたえにくい質問。

日本には三大車窓というものがある。
車窓から見る風景が美しいところベスト3!だ。

JR九州肥薩線の人吉〜吉松間。
ぐるっと輪を描くように急勾配を登るループ線と
ジグザグに登るスイッチバックが同じ所にある。

鉄道ファンには、タマラナイ。

次は、JR東日本の篠ノ井線姨捨駅。
ここもスイッチバック。
善光寺平と千曲川が眼下に広がり美しい。

最後はJR北海道根室本線の落合〜新得間。
狩勝峠をスイッチバックで越えて、十勝平野を望む。
ここは、新線開通によって消滅してしまいましたが。

これは一般的に景色がいい3つだが、個人的には、
そういう有名な場所ではなく、
田んぼと踏切がある
なにげない風景がいいなぁと思ったりする。

日本は、季節によって姿を変えるから、
夏に行くか、冬に行くかで、ぜんぜんちがう。

旅というものは景色はさして関係ないと思っている。

有名地だけをあたふたとめぐる旅など
なんだか浅くて薄いものだと思っている。

だから、どこの景色がいいか、
その質問にはなかなか答えられない。

「え、いつもひとり旅なんですか?
 奥さん、何にもいいませんか?」

乗り鉄は、自由こそ本質。
なぜ、自由を奪うことをする必要があるのだ。

相方も、私のことをそういう人だと最初から知っている。
むしろ、夫婦いっしょに旅行などしたりするから

だから別れるのだ。離婚したりするのだ。

離婚した多くは、
夫婦でよく旅行した人じゃないだろうか。
調べたことがないが、確信はある。きっとそうだ。

夫婦だけじゃなく、
複数で旅行すれば、かならずイザコザは起きる。

まして、何が起こるかわからない乗り鉄の旅は、
フットワークのよさが必である。

乗っていた列車が遅れる。
乗り継ぐ列車に、乗れない。

そういうときには、
すぐに時刻表を開き、予定を変更する。

決断力と行動力。

乗り鉄の若者は、かならず
優秀はアシスタントプロデューサーになれる。

「駅弁は、どれがうまいか」

この質問も、よくある。

私は列車に乗っているときには、駅弁は食べない。
乗っているときは、ひたすら車窓を眺める。

走り去る景色を眺め続ける。
もう二度と会えない風景を見逃したくないからだ。

駅弁を食べていたらどうだろう。

目線が駅弁に行ってしまう。
車窓から、目が離れてしまう。

ノールックで駅弁を食べるのは、至難の技だ。

しかし、缶ビールはオーケーだ。
ノールックでプシューとでき、
ノールックでグビグビ飲める。
車窓から目を離さなくてすむ。

だからと言って、
駅弁を食べないわけではない。
駅弁は、名前の通り、駅で食べる。

そして、最も多い質問が、

「どのくらいお金がかかったのか」

これは、正直、わからない。
計算したことがない。

小学生のときに、なんとなく始めた趣味だ。

記憶はあるが、記録はない。

北海道は全線乗ったぜ、とよろこんで、
乗った線を塗りつぶせる「乗りつぶしノート」で
確認したとき、乗っていないところを発見した。

ガクゼンとした。

新千歳空港駅〜南千歳駅の
1駅間を乗っていなかったのだ。

私は北海道へ行くとき、飛行機で行かない。
当然、新千歳空港を使わない。だから、
新千歳空港駅から乗ったことがなかったのだ。

私は、その1駅間。
その当時、いくらだったかわからないが、
今は310円の、そのたった1駅間を乗るために、
東京から出発した。もちろん鉄道で行く。

その1駅間のために10万円以上使った。

そんな人間だ。
全線完乗するまでに相当な費用を要したことだろう。

運賃や宿泊代だけじゃない。
成人してからは、そこに飲み代が加わる。

何百万?いや一千万円以上なのか?

そんなことはわからない。
たぶん高級車は買えただろう。

そうこたえると、

げ、もったいない!

と叫ばれたことがある。

もったいないとは、失礼な!
君のケータイ代のほうが、
私にとっては、ぜんぜんもったいないぞ。

乗り鉄という楽しい趣味に
投資してきたことに誇りを持っている。

今は、私鉄篇に突入している。

全国の私鉄の7割ほどは乗った。
関西が難敵なので、これからもお金はかかるだろう。

プラス飲み代。金が流失していく。

ずうずうしいお願いだが、
みなさん、こんな趣味をもっている私を
支えていただけないだろうか。

方法はカンタン。
仕事をどんどん発注してくれればいいのだ。

旅費と飲み代という2つの大型出費に
家計は耐えなければならないのですよ。

目算もないまま、どうにかなるさとの思いで、
フリーランスになるという
危ない橋を渡ってしまっています。

みなさんの温かい気持ちと同情。
なんて素晴らしい。

花岡邦彦
hanaokakunihiko@icloud.com
twitter.com/kunihanaoka

NO
年月日
名前
4523 2018.08.10 鈴木拓磨 TOKYO 2100
4522 2018.08.09 鈴木拓磨 書き出し小説
4521 2018.08.08 鈴木拓磨 息子が黙ってない
4520 2018.08.07 鈴木拓磨 父がボディビルダー
4519 2018.08.06 鈴木拓磨 日本コピーライターズクラブ
  • 年  月から   年  月まで