リレーコラムについて

わたしと鳩と

飯田麻友

この春、引越しをしました。

時期が時期だけにお部屋探しはかなり難航したのですが、
以前住んでいた部屋の更新が差し迫っていたため
若干えいやで決めてしまったのですが、

引っ越した瞬間、ちょっと、
失敗したな〜〜と後悔しました。
その理由の一つが、

です。

内見のときには
完璧に見落としていたのですが、
ベランダに・・・鳩が・・・鳩がやってくる・・・。
(今思うとなぜ気づかなかったのか・・・・)

生まれてこの方、
鳩など、いわゆる害鳥やら害獣の類に
悩まされたことは一度もなく。

それどころか、首を前後に揺らしながら
ぽっぽぽっぽと歩く様が愛らしく、
地元の駅にいっぱい生息していたこともあって、
結構好きだったんです。鳩。

ところが。

もう、あいつら、
容赦なくフンを撒き散らしていくんですね。

休みの日に必死で掃除をしても、
月曜の夜、帰って見てみると、
当然のごとくフンが・・・・。

それだけではありません。

くるっぽー くるっぽー

と、早朝5時頃から、
奴らは鳴き出すわけです。
うちのベランダで、わが物顔で。

目覚ましでも起きられない私が、
鳩の声で目が覚めてしまう。
鳩時計とはこのことか・・・とか
思っている余裕もありません。

すると、どうでしょう。
あんなに愛らしいと思っていた鳩が、
嫌悪の対象となり、
見るだけで胸の奥から黒い感情が湧き出るように
なってきたではありませんか。

公園の鳩。駅前の鳩。
なんなら、「鳩のフンに注意」と書いてある立て看板まで
見るだけでモヤモヤっと嫌な気持ちになってしまう。

なんということ。

自分で言うのもアレなのですが、
何かを嫌ったり怒ったりすることは割りと少ないし、
基本、世界は好きなものであふれていたほうが幸せだ、
なるべく何かを嫌いにならずに生きていたい、
と思っている人間なのです。
それなのに。

わたしの日常から、鳩が平和を奪っていく。
平和の象徴のくせに。

・・・その後、ネットで鳩対策について勉強し、
100均の針山マットとテグスを設置したおかげで
やってくる鳩の数はかなり減り、平穏を取り戻しつつはあるのですが、

この一件を通して、
一度何かを憎むと、その憎しみをゼロにするどころか
もう一度好きになることの難しさを感じたんです。

あんなに愛していたはずなのに、
浮気した旦那のことを、
非難しまくった動画をアップしたりするし、

昨日まで友達だったのに、
ちょっとしたケンカがキッカケで
LINEをブロックしたりするし、

まあ、程度の差こそあれ、
憎しみというものは、
誰の心にも簡単に巣食うものなんだなと。
実感したわけです。鳩で。

しかも今の時代、負の感情というのは
とても広まりやすいと思うのですよね。

そりゃ、
嫌われないように、嫌われないように、
目立たないように、目立たないように、
みんなと同じように。
って、考えるようになっちゃうよなぁ。と。

でも、広告はそれではいけない。

気づいてもらうために、
振り向いてもらうために、
目立たなければ。
ときには、あの鳩のように。

あの鳩が、ベランダで何をしてくれたら
嫌いにならずにすむだろう。
ふたたび、彼らを愛せるのだろう。

あの鳴き声が一発ギャグに聞こえたらどうだろう。
ちょっと具合が悪いときに、
伝書鳩として私の様子を派遣さんに伝えてくれたら、
毎日のうるさい鳴き声をチャラにできるだろうか。
ていうか、コラムのネタになっているから
もう許してやってもいいんじゃないか。

なんてどうでもいいことを考えながら、
窓の外で飛んでいる鳩を眺めています。

無理やり広告の話をからめたりしましたが、
なんだかんだ、今日も平和です。

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