リレーコラムについて

コミュニケーション・デザイナー。(前編)

尾上永晃

コミュニケーション・デザイナーという職種があります。
マス一辺倒でなくなったときに、
デジタルからリアルまですべての領域において
強固なストーリーを作り上げてキャンペーン化していくという技能。
この概念を作ったとされるのが岸勇希という人で、
実は僕の師匠にあたる人です。
でも僕の職種はプランナーです。
なぜかというと、
コミュニケーション・デザイナーと名乗っていいのは
岸さんしか居ないんじゃないかと思うからです。
いえ、洗脳されてるからとかじゃないです。
頭がおかしくないと出来ないからです。

岸さんという人は大変に頭がおかしい。
具体的にいうと、偏執狂を煮込んだ結晶というイメージです。

例を出しましょう。

コミュニケーション・デザインは
キャンペーンにおいてユーザーが出会うすべての面の設計ですので
まず企画書が勝負となってきます。
ここで、どこまでユーザーの動きが想像できているか。
ユーザーはどんな反応をするのか。
それに対してどういう手だてをとるのか。
が、最初の段階で詰められてないとデザインもくそもないわけです。
(もちろん実施段階で調整していきますが)
なので、まずは参加してた打ち合わせの内容を踏まえて
企画書を完璧に仕上げてみなと言われます。
これが地獄の始まりでした。

最初だしこんなもんかな。
と思って送ったらアウトです。
夜中の何時だろうと鬼電がかかってきます。
「なんでこんなにダメにできるの。」
「お前これでプレゼンできるわけ。」
「ユーザーが動くと思うのこれで。」
岸さんはものすごく早口なので必死にメモしながら
「はい。」「ですね。」「っす。」
の3ワードで対処します。
それ以上のワードを言うと、そこから延焼する可能性があるからです。

必死で直して、これなら完璧だろうと送ると即電話が来ます。
「行頭がずれてる。」
「矢印の意味的ルールが統一されていない。」
「感情の動きが入っていない。」
もう外が明るくなってきています。
さすがに寝ただろうと思って修正して送ると

「15Pのフォントが一部太字になってる。」

やばくないですか?
そのフォント、太字と普通の見分けがつかないんですよ。
じっくり見ないと。
何で分かるの…?

で、そのまま寝ずに会社行って
ビクビクしながら岸さんに会うと
「まだまだ雑だな。机片付けないからだよ(笑)」
って大体笑って終わり。
おや、昨晩のあれは幻だったのかなと思って、
また次のタイミングで企画書を送ると
鬼詰め。現実でフィニッシュです。

長くなってきたんで、明日に続きます。

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