リレーコラムについて

私をコピーライターにした男たち③ 〜となりの(エロ)師匠〜

木村敦子

毎日の『コピー交換日記』で、広告の基礎と
社会人として大切なことをYさんから教わると同時に、
実際に求人広告を作る過程は、また別の男性から教わっていました。

それが、TCC会員でもあるMさん。

Mさんは、私の一つ年上。
クイックの制作課はベテランスタッフが多かったので
それまで誰かを指導することはあまりなかったそうで、
私はMさんの最初の弟子(?)になりました。

配属時からとなりの席で、みっちり指導。
取材をしてきた営業さんから一緒に話を聞き、
1本の原稿にかけていい時間を設定。
ストップウォッチをデスクに置いて原稿を作り始め、
完成したら見てもらって、やり直し。
修正にかけていい時間をまた設定し、よーいドン。

1週間に30本以上の原稿を入稿する求人広告の仕事は、
時間が命。基本的におっとりマイペースな私は、
Mさんの存在をとなりに感じながら、
いつもハラハラ、ドキドキ、緊張感MAX!で仕事をしていました。

なぜならMさんは、私の憧れの存在だったから。

制作になって早い段階でTCC新人賞を受賞し、
リクルート内の広告賞も総ナメ。
社内のアドコンテストは1位が当たり前のMさんは、
制作だけでなく、営業さんにとっても憧れの存在。

Mさんに原稿を作ってもらえるとわかっただけで
営業さんはうれしそうだったし、
となりの席にいると、

「このキャッチコピー、最高ですね!!」
「さすが、Mさん!」
「Mさんのおかげで、いい人採用できました!」

という営業さんの弾んだ声が、痛いほど聞こえてきました。

実際、Mさんのコピーはどこかやさしくて、チャーミング。
私も当時から大好きで、今でも男性のコピーライターさんの中では
1番好きなコピーを書く人かもしれません。

だからこそ当時は、
「どうやったら、Mさんみたいになれるんだろう?」と
常に悩んでいたし、たくさん嫉妬もしました。
「Mさんみたいに賞を取れば、私も認めてもらえるはずだ!」と
素直にコピーが書けなくなった時代もあります。
そんな私を見て、Mさんや他の先輩たちが呆れていたのも
薄々感じていました。

でもそんな時も、「原稿を見てください!」といえば、
締め切りギリギリまで何度も見てくださったし、
求人広告の制作として、コピーライターとして大切なことを
身をもって教えてくださいました。

そもそもMさんがTCC会員でなければ、
TCCを近くに感じることもできなかったし、
「自分にはムリ」と最初から諦めていたはず。
そういう意味においても、
私はすごくラッキーだったと思います。

去年、TCC新人賞をいただいた時に
最初に連絡したのも、Mさん。

でもその時の「おめでとう!!」という電話よりも、
その半年ほど前に久しぶりにコピーを見ていただいた時に、
メールで届いた
「コピーを見て、昔のあっちゃんとは全然違うことがわかりました」
という言葉の方が、うれしかったかもしれません。

私はひょっとしたら、
「ただ賞が欲しかったのではなく、
Mさんに認めて欲しかったのかもしれないな」
と思ったのを、覚えています。

ちなみに、最近TCCの集まりなどに行くと
共通の知人に会うことが多いので、
「Mさんの後輩です」と挨拶すると毎回、

「あー、あのエロい人ね!!!」

と満面の笑みで言われるのですが。。
私はMさんのそういう面を全く知らずに育ったので、
いつも返答に困ります。

Mさん、今度会った時は、
その返答の仕方の指導をよろしくお願いします(笑)。

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