リレーコラムについて

とは言え、「コピーを選ぶ目」は養われなかった。

佐藤朝子

先ほど食器を洗っている間
赤子が妙に大人しいと思って見てみると、
私のベルトをべろんべろんに舐め回してました。
ベルトって汚いですよね。洗わないですもんね。
おなか下すかな・・・まあいっか。

さてさて。
会社復帰をしました。というのが昨日までのお話でした。
会社復帰をしてすぐ、私は病児保育のノーベルさんの仕事に
取り組んだのですが、それにはもちろんきっかけがありました。

休んでいる間に、安倍首相が「育休3年説」をとなえました。
3年という期間自体の善し悪しはさておき、その発言をきっかけに、
様々なメディアでワーキングマザーに関する話題が飛び交う様になりました。
その中で、
「子持ちのメンバーがいるとそのフォローをしなくちゃいけないのが面倒くさい」
「他の人が残業してるのに、子どもがいるからって当然の顔して帰っていくのは腹が立つ」
「職場や飲み会に子ども連れてくるのって、みんなカワイーって口では言うけど本当は迷惑だから」
といったような意見を目にして、
むーん。
と複雑な気持ちになったわけです。
言ってる事はわかる。
けど、それ言われたら、究極的には
仕事を辞めるか、あるいは
母親の役割を放棄するか、
どっちかしかなくなるからなー・・・。
もやもやと考えていた時、
以前からお付き合いのあったノーベルさんの事を思い出しました。

「子どもを産んでも当たり前に働き続けられる社会」の実現を目指し
病児保育に取り組んでる、そのノーベルさんのお手伝いをすることで、
働くお母さんの後押しみたいなんできんかなー。
なんてちょびっと思ったのです。
それで、休み中に赤子を抱いて事務所にお邪魔したところ、
ちょうどチラシ作成の話があったので、
復帰後すぐに若いAD男子をたぶらかし巻き込んで、
チラシと、ついでにポスターも作らせてもらったのです。

子どもは突然病気になる。
でも、どうしても仕事を休めない時がある。
そこでお役に立つのが、病児保育のノーベル。
お家で、お子さんを預かります。
ほぼ、ていうか完全に当事者としてコピーを書けるこの内容。
自分なりに勉強したことをぶつけて書いて、プレゼンしました。
クライアントさんも喜んでくれて、
今までの私なら、そこで、できたーつって終わってたんですけど、
今回は何がなんでも新人賞、の意気込みから、
色んな人にコピーを見てもらったんです。
子持ちの女性からは、良い反応が得られました。
しかし、男性陣から帰って来た反応は、
「わかるけど、まあ、うん・・・」でした。

あ・・・危なかったぁ・・・。
当事者たちには理解できても
周りには伝わらない、
せまーいコピーになっちゃってたんです。
これで満足して納品してたらまた泣いてたところでした。
いやー、見てもらうもんですね。
それでまた一から書き直しました。
4人のTCC会員の先輩に見てもらいました。
面白い事に、みんなけっこう
「これが良いんじゃない」というコピーが
違ってたりしました。
「こうした方がいいんじゃない」もそれぞれでした。
見る目がある人達が見ても、やっぱ色々なんだなー。と。
この、みなさんの意見を参考にしてまた書き直して・・・の
作業をしてるときがとっても楽しかったです。
自分ひとりの頭だとやっぱり偏ってしまう。
(でも巨匠たちは360度の視点を全部ひとりの頭の中で
 持ってるのかもしれません。どうなんでしょう。)
他人の視点を入れて、それをまた自分の頭で処理し直すことで、
アイディアの幅は格段に広がります。
普段の仕事でも私はひとりで考えるより、
みんなで話ながら企画を作って行く方が好きです。
たくさんの人に意見を求めると混乱してよくない場合もあるのですが、
今回は当事者だからこそ近すぎてコピーの選定を自分で
うまくできなかったこともあり(というかそもそも選定眼が未熟なため)、
複数の人の意見を聞いた事が功を奏したと思っています。
ちなみに、若い頃は人に意見を聞けば聞くほど
どうしたら良いか分からなくなって、
どんどん企画が悪くなって行く、ということがありました。
アドバイスを求めるなら、アドバイスを処理する能力も必要なんですね。

そしてそして。
多くの先輩、後輩、そして家族の手助けを借りまして。
今、私はここにコラムを書いているのです。
TCC新人賞をとった、コピーライターとして。

あ、でもこんだけドヤ顔で語ってますが、
ほんとギリギリで入ったので、
言うほど学んでないんじゃないかという説もあります。
そんなもんです。
勉強してコピー能力が身に付いたから、
というよりは、
今までより気合いを込めて強く手を伸ばしたら
ギリギリ届いたっていう、
そんな感じなので、正直この先とっても不安です。
でも、そこはもう頑張るしかないので、頑張ります。
あとやっぱりとても素敵なクライアントさんに
出会えていたということも大きいですね。

ノーベルさんとは、2年前に、
働くお母さん向けの冊子を作るという
お仕事からお付き合いがはじまりました。
子どもを産んでなければ出会えなかったクライアントさんです。
そして、その冊子のお仕事がきっかけとなり、
電通関西社内に
「おかんカンパニー」
というソリューションチームを作る事になったのです。
明日は、仕事と子育ての関係について思うこと、
そしてその「おかんカンパニー」について、
書かせて頂きたいと思います。

最終回につづく。

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年月日
名前
5692 2024.04.21 長谷川輝波 言葉オブザイヤー@ヘラルボニー
5691 2024.04.20 長谷川輝波 言葉オブザイヤー@韓国の街中
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5689 2024.04.12 三島邦彦
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