リレーコラムについて

枕草子の日々#5 〜 歌とことばとひらがなと

一倉宏

一倉です。

クリエーティブディレクターとしての佐々木宏(敬称略)
の、知られざる一面は「音楽へのこだわり」です。
相当の音楽好きです。けれど、その選曲はマニアックに
は傾かない。それがヒットメーカーの秘密かもしれない。
「そうだ、京都、いこう。」の「My favorite things」
がいい例かな。ポピュラーかつセンスのいい曲を選ぶ。
TOYOTOWNのアンドレ・ギャニオンは、そうきたか、
っていう感じ。やっぱり、キーワードは「POP」である
ことかな。広告にとって、いちばん大事なことでしょう。
広告はアートではないのだから。
そういえば、斉藤和義「歩いて帰ろう」も、だいぶ以前
サントリーウイスキー「膳」のCMで先取りしてた。

もうひとりの同世代、佐藤雅彦(元プランナー・現東京
藝大教授)も、音楽のつかいかたがうまかった。
ジングル系の<ザ・コマソン>を復権させた立役者。
「♪ポリンキー ポリンキー…」は、まさに「♪カステラ
いちばん、電話はにばん…」へのオマージュだったはず。
企画と映像も含めて。同世代だからよくわかる。
「♪バザールでござーる」も「♪モルツ モルツ…」も。
「♪カローラIIに乗って 買い物に出かけたら…」。
シンプルで親しみやすいだけでなく、CMとしてすごく
計算されていた。15秒を計算しつくしてつくっていた。
みんな、実質上、佐藤雅彦作詞作曲でした。
いまも、ジングル系のコマソンは数知れないけど、なか
なかあのレベルに達しているものは見かけません。
「♪それゆけ グリーンダカラちゃん…」は、いいね!

そして、私の場合は。
イメージソングばっかりつくっているロマンチストでは
ありません。ちゃんと計算だってしますよ。
私にとって、ひれ伏すレジェンドのひとつがこれです。
「♪それにつけても おやつはカール…」。
なんという凄いコピーだろう。強引なのに、愛すべき。
前の句に、何がきても成立する、その万能の仕組み。
これにならってみたことがあります。及ばないけれど。
「♪ナニノモッカナ ビタミンウォーター」
作曲は菅野よう子、歌はクリスタル・ケイ(13)。

CMソングは、詞を先につくります。計算しながら。
いまはやりの「替え歌」CMはそうじゃないけど。
どうして「替え歌」や既存曲の「引用」が多いのかなあ。
もったいないなあと、いつも思います。コピーライター、
プランナーは、自分でつくってもいいんだよ。
自分で書いてもいいんだよ。歌にできるんだよ。

コピーや企画との、連携を考えながら。響きあうことを
考えながら。ことばは音楽になることができる。
そして、音としてのことばについて考えることになる。

私はまず「ひらがな」で詞をつくります。
その方が、譜割りというか、字数の計算がしやすいから。
そして、耳で聴くことば、響きに自覚的になるから。
「ひらがな」で読んでわかりにくいことばは、耳で聴い
てもわかりにくい。漢字変換は、いちばん最後に。

いいもんだな、ことばは。いいもんだな、歌は。
そんなことを思いつつ。長々と書いてきました。

私のリレーコラムは、本日で終わります。
「ちょっと飲んでみ 間接キッスしてみ」(サントリー
「ふんわり鏡月ゆず」CM)で、TCC審査委員長賞を
受賞することになった、松村祐治くんにバトンタッチ。
松村くん、プロのミュージシャンでもあります!

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いよいよ、5/26(月)の
歌曲集「枕草子」リリース記念コンサートに向けて
カウントダウンとなりました。

平安の「ひらがなの文学」を現代の歌にしました。
ご興味のある方、ご家族などにもご紹介ください。

こんな音楽、コンサートです。

お問い合わせ・電話でのご予約は
ムジカキアラ 03-5739-1739(平日のみ) 

プレイガイド:イープラスから
http://eplus.jp/sys/T1U14P002118736P0050001

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