リレーコラムについて

サザエさんはなぜいつまでも高視聴率をたたきだしつづけているのか。

佐藤舞葉

*長文です。

サザエさん。言わずと知れた国民的人気アニメだ。

サザエさんとは、

・日本の家庭の代表

・ありふれた日常

・古き良き時代

を描いた作品であり、だからこそ長きにわたり支持されてきた、と考えられている。

しかし、少し考えてみてほしい。

サザエさんの家庭をよく観察してみると、

・フネの超高齢出産により、年が10は違う兄弟

・核家族化が進む日本では珍しい三世代同居スタイル

・その上、義兄、義姉と同居

と超レアケースな家庭であることに気づかされる。

さらに、サザエさんのオープニングの曲に着目していただきたい。

「お魚くわえたドラ猫 追いかけて 裸足で かけてく 愉快な サザエさん」

日本のどこに魚を加えた猫を追いかける主婦がいるだろうか。

「みんなが笑ってる おひさまも笑ってる ルルルルルル 今日もいい天気」

クレイジーである。正気の沙汰とは思えないのである。
これのどこが
「ありふれた日常」なのであろうか。

「サザエさんはなぜいつまでも高視聴率をたたきだしつづけているのか。」

それはすなわち

「なぜサザエさんのような特異な家族の非日常な出来事が描かれた作品が、
長年にわたって共感をもって迎えられているのか」
という疑問にこたえることに他ならない。

前段が長くなってしまったので、さっそく結論に入ろう。

サザエさんの「特異な家族構成」「非日常な行動」―これこそが、
サザエさんをロングセラーへと導きだした要因なのである。

人気の理由を、大きく3つに分けて説明する。

① 人間関係のパーツを寄せ集めた家族構成
② 多面性のあるキャラクター
③ 「あるある」はレアケース

① 「人間関係のパーツを寄せ集めた家族構成」

さきほど「サザエさんの家族構成は特異」と紹介したが、
これが長寿番組である肝になっている。

すなわち、通常の家族構成ではせいぜい、「親子」「兄弟」関係しか描けないところ、
サザエさんは複雑な家族関係であるが故に、「嫁姑」「婿舅」「祖父母孫」「伯父と甥」など様々な人間関係を描くことに成功している。

他の長寿アニメが、新しいキャラクターや新しい道具など、毎度モルヒネを打ち続けているのに比べ、サザエさんでは新しい「何か」はほぼ出てこない。人間関係が家族間で完結しているので、新しいキャラクターを出す必要がないのである。

② 「多面性のあるキャラクター」
通常、アニメのキャラクターは一定の個性や役割を与えられ、それに則って行動するものと考えられている。(たまに、「映画のジャイアン」のように、違う個性を発揮することもあるが。)

ところが、サザエさんは事情が違っている。例えばカツオはワンパクでいたずらっ子という一面を持ちながらも、実は狡猾で鋭い一面を持ちあわせるなど、多面性のあるキャラクターとして描かれている。考えてみれば単一の個性しか持ち合わせていない人間なんていない。明るい人が24時間明るいなんてことはない。サザエさんはそれぞれを「記号」としてのキャラクターではなく、「人間」として描いている。だからこそ、我々が共感できる確度が高まるのである。

③ 「『あるある』はレアケース」

サザエさんの荒唐無稽に思える行動。現実そんなこと起こらねーよ、という出来事。これに我々が共感できるのは、実は当然のことだ。

なぜなら、私たち人間は現実に起こり得ない「レアケース」にこそ「あるある」と共感する生き物だからである。

この意外な真実について、調査した番組がある。
だいぶ前に惜しまれつつ終わった「テベコン・ヒーロ」というバラエティ番組だ。
その日の企画は、テツトモの「なんでだろう」というギャグに対して、専門家の観点から全て真面目に答えるという芸人殺しの内容であったのだが、
その中で、「あるある」の核心に迫る回答があったので紹介する。

(その内容についてまとめていたサイトから以下転用します)

カラオケBOXで、間違って入れた曲が大体演歌なのなんでだろう?

★答え
カラオケ大手の第一興商のシステムを例に取ると、
約15万曲が登録されているが、割合としては断然ポップス系の曲が多い。
なので、間違って入力した場合に演歌が出るのは稀なケースである。
では、なぜテツ&トモはこのような疑問を抱いたのか。
それは、勝手な思い込みであり、錯覚である。
心理学の観点から分析してみましょう。
色々な出来事を覚える事を心理学ではエピソード記憶と言います。
ありふれた出来事よりも、
あまり起こらないレアケースな出来事の方がよく覚えている。
つまり、エピソード記憶として強まるということになる。
カラオケBOXで間違って入れた曲が大体演歌だと感じるのは、
それがレアケースだからであり、それゆえ記憶に強く残ってるのである。

ちなみに、そのほかのネタで
「全然知らない人から留守電入ってるのなんでだろう?」や
「ハエたたきを持つとハエが居なくなるのはなんでだろう?」
これらもレアケースなのによくあることのように思い込んでしまった偽りの「あるある」である。
一般的に「あるあるネタ」はこのケースに当てはまる事が多い。
(転用終わり)

なんと、ほとんどの「あるある」ネタは、記憶に強く刷りこまれただけのレアケースであるというのだ。

「あるある」は「なしなし」であるという逆説。
それを真とするのならば、サザエさんの荒唐無稽の珍事に共感できるのも、当然なのだと納得できる。

落語家・立川志らくはこんなことを言っている。
「映画にリアリティを求める人のなんと多いことか。映画はドリーム。全編歌っていても何ら違和感はない。映画にリアリティばかり求めるようになって映画が崩壊し始めた」

マーケティング発想でつくられたエンターテイメントはつまらないとしばし評されるのは、「あるある」を「あるある」として真に受け、リサーチの結果に忠実に「本当によくある出来事」で構成された内容になっているからではないだろうか。そんなものでは人は共感も感動もできない。

OLはOLに共感する、とは限らない。
むしろ、宇宙人が描かれているほうが共感できることだってある。

日常風景を穏やかに切り取っているかのように見えて
実はリアリティ完全無視。
それが、「サザエさん」という番組。

この番組から学べることはまだまだ多い。
次はぜひ「サザエさんとノスタルジー」というテーマで考察してみたい。

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