リレーコラムについて

実家のポケットティッシュ 中編

橋本卓郎

a○ショップのカウンターに座る
僕とそのこわいお兄さんは、
かなり不自然だったと思います。

路上でお兄さんに「どーすンだよアン?アアン?」と、
ここ満員電車だっけ?という錯覚を起こしてもおかしくない距離感で
詰められていた僕は、
「まず、修理代がいくらになるか調べませんか」
というわりと理にかなったご提案をし、
無事それをご了承いただいていたのでした。
(連れのお兄さんは、めんどくさがって帰りました)

店員さんたちはみな、別のお客さんを対応中です。
仕方なくしばらく、待つことになります。
もちろん会話はありません。
こわいし、気まずいし、もうヤダ…でも、
路地裏とかに連れていかれなかっただけで十分だよな、
とか思っていると、
ヘンな音が隣から聞こえてきました。

ズルッ・・ズルルッ・・・!!!

見ると、そのこわいお兄さんが
おもいっきり鼻水をすすっていました。

そういえば、風邪をひいているのか、
彼はずっと鼻をズルズルやっていたのです。

僕にアン?アアン?している最中も、正確には、
アン?…ズルッ、アアン?…ズルルッ、だったのであり、
何度となく鼻をすすったりこすったり、
あの手この手で鼻水と格闘していました。

そうだ。
僕はもっていたカバンをあけ、中を探しました。
そして発見したのです。

光り輝く、ポケットティッシュを!

すかさず取り出して、彼に渡します。

「どうぞ。これ使ってください。」

ナイスティーッシュ!!!
と、僕は心の中で叫んだ。ような気がします。

とにかく、
こうしてお兄さんに少しイイことをすることで、
どんなことかはわからないけど、
きっとトクすることがある。そういう下心がありました。

しかし、

現実は想像していたものとはちがっていました。

こわいお兄さんは、僕のティッシュを受け取ることなく、
じっと僕の顔を見ています。
というかにらんでいます。

僕は頭が混乱しました。

え、だって鼻水ズルズルですよね?
わるいことしてないですよね?
むしろすごくいいことしてますよね?

そしてふと、手元のティッシュに目を落とした瞬間。
世界が3秒ほど時を止めたのを、
僕はいまでもはっきりと憶えています。

まさか……

なんで……

キティちゃんの柄……

つづく

NO
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