リレーコラムについて

ブルース的

西橋裕三

 ボクはたまに宴会芸でブルースを唄います。
 
 あるとき日本人がB・B・キングにこう尋ねました。
 「日本人にもブルースが唄えるんでしょうか?」
 彼は静かな笑みをたたえながらこうこたえました。
 「あなたは悲しいと感じたことがあるでしょう。
  つまり誰にでもブルースは唄えるのです」

 これはずいぶんまえのハナシですが、ある夕暮れ時、
 荻窪発の西武バスに乗って発車を待っていたボクは
 どこからともなく聞こえてきた鼻歌に耳をうばわれ
 ました。というのもその歌声がやや年輩の女性の声
 であり、その旋律があきらかにブルーノートを含んだ
 ある種のブルースだったからです。

 ボクはその声の発信地が車内であること、それも
 ボクの席からそんなに離れていないことをすぐに
 理解しましたが、そちらに顔をふりむけることは
 しませんでした。正確に言うとふりむける勇気を
 持ち合わせていなかった、というべきでしょう。

 いずれにしてもそのとき、あたりの風景が荻窪では
 なく、夕陽に暮れなずむアメリカ南部の田園地帯と
 一挙に化し、ブルースな一日が暮れていったのでした。

 

西橋裕三の過去のコラム一覧

0324 2000.12.15 教養番組の録画者
0323 2000.12.14 飛行夢家
0322 2000.12.13 ブルース的
0321 2000.12.12 カヌーライフ
0320 2000.12.11 逆デジャブ
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