リレーコラムについて

で?

山田綾子

大学では、建築を勉強していました。

はじめての設計の課題。
自分なりに一生懸命、考えていったプランを、
自分なりに一生懸命、先生に説明しました。
がんばって考えたし、ほめられるかも!

そこで先生から返されたのが、「で?」のひと言でした。

「で?…って???」
私は頭が真っ白になりました。
考えてたことはぜんぶ説明したし、どうしよう…?

しばらくの沈黙のあと、先生は笑顔で言いました。
「なんか、つまんないよね。」

それが、私が建築、というか
クリエイティブみたいなことの入り口に立ったときだった気がします。

その後、私は先生の研究室に入り、
「で?」の洗礼を浴び続けることになりました。

夜中1時のミーティングでの、
「で?」
「…(1時間沈黙)」
みたいな。

先生は、こちらがなにか言うまで、ひたすら待ってくれました。
あまりのプレッシャーに当時はおののくばかりでしたが、
いま考えると、なかなかできることじゃないと思います。

自分から答えを言わず、ひたすら待つ。
きっといま、何かを考えている。きっとその先に、何かが出る。
その可能性を信じてくれていたんだと思います(たぶん)。

その後、職種はちょっと変わりましたが、
先生との出会いがなかったら、
たぶん、いまこの仕事にはたどりついていなかったと思います。

というわけで、今日のお手紙。

・・・・・・・・・・・・・

拝啓 横山先生

あのときの「で?」、ありがとうございました!
この仕事で、どうにかやってます。

                      敬具

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