リレーコラムについて

死んでから、大きくなった父。

丸原孝紀

父のことを、情けない人だと思っていました。

仕事から帰ったらずっとテレビで、
休みの日はパチンコか図書館。
定年しても何するでもなく、
毎日ボーっと過ごしていました。

そんな父は数年前、病気でこの世を去りました。
みんな、かわいそうだと言いました。
ずっとコツコツと働き続けて、やっと
やりたいことができたかも知れないのにね、と。
私もそう思っていました。
さみしい人生だったのではないかと。

生活することは大変です。
父の仕事は漬物づくりでした。
相手が生ものなので、休みは日曜だけ。
年末年始もあまり休めません。
ひたすら毎日、野菜と冷たい水を相手にする仕事です。

それなのに、父は弱音を吐くこともなかった。
酒やギャンブル、女に溺れることもなかった。
そして働き抜いて、ふたりの子どもが就職し、
結婚し、親になるのを見届けて、この世を去った。

周りにはさみしげに見えたその人生だけど、
最近、そうでもなかったのかも、と思います。

自分が父になって気づいた喜びがあります。
それは、子どもが元気に育つこと。
妻がいきいきと生きること。
そして、仕事でうまくいって、
みんなでバンザイすること。

それを考えると、
家族の生活を守り抜き、
仕事をやり抜いた父の人生は、
地味ではあっても、
満足できるものだったのかも知れない。
仕事を続け、家庭を支え続けるのは、
当たり前のようで、
並大抵のことではありませんから。

私は今では、
父のことを本当に誇りに思います。

仕事で自己実現、なんてよく言われますが、
それって実は、すごく小さなこと。
自分はもちろん、誰かを幸せにできる。
それこそが仕事をする喜びなんじゃないか。

大きな成功を求めるのも大事ですが、
目の前にある小さな仕事や、
周りの人を大切にする気持ちを
忘れてはいけない。
私はついつい忘れてしまうので、
父はやっぱり、すごい人だったと思います。

…毎度、地味なコラムですいません。
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